車輪になる

 俳優が舞台を懸命に務めることを「車輪になる」というらしい。そこから一心に事に当たることも指すようになった▲地方自治体の長と議会の議員は、よく「車の両輪」といわれる。長崎市、佐世保市では両輪ともに、大村市議会や五つの町議会でも新しい顔触れが決まった。まさに「車輪になって」、汗をかいてほしい▲低投票率を背景に、近年は選挙への関心が低下したとされる。とりわけ議員は「誰がなっても同じ」という、諦めに近いぼやきも見聞きするが、地方自治ジャーナリストの相川俊英さんは、そんな諦めの時期はとうに去った、と著書「地方議会を再生する」(集英社新書)で言い切っている▲議会改革に当たった長野県飯綱(いいづな)町を引き合いに、議会が「住民のためになる」ことをはっきり示せば、議員の考えも住民の考えも変わる、と相川さんは言う。一例が飯綱町議会が始めた「政策サポーター制度」だった▲手を挙げた住民の意見をじっくり聞き、取りまとめて、行政がなすべきこと、解決策を議会が提案する。議案を通すだけが仕事ではない▲両輪ではなく、住民も加えた“3輪”で地方自治が動くこともある。同じ制度を、と言うわけではないが、何よりも住民の声に耳をそばだてるのが行政トップ、議員が車輪となる、その事始めに違いない。(徹)

© 株式会社長崎新聞社