次期市長に聞く 長崎・鈴木史朗さん「街の進化を内外に発信」 佐世保・宮島大典さん「市民目線で市政運営」

「使命の重さを痛感している」と語る宮島大典さん=佐世保市上京町(左)、当選から一夜明け、心境を語る鈴木史朗さん=長崎市魚の町(右)

 現職の退任に伴い、16年ぶりに新たなリーダーが誕生した長崎、佐世保両市長選。それぞれ激戦を制し、市民の信任を得た長崎市の鈴木史朗さん(55)と、佐世保市の宮島大典さん(59)に今後の市政運営の方針などを聞いた。

◎長崎 鈴木史朗さん(55)/街の進化 内外に発信

 -一夜明けた気持ちは。
 選挙戦を一生懸命走ってきて、ぐっすり眠ったので今は気分爽快。市民の皆さんにいただいた6万5千票の重みをずっしりと感じている。
 -選挙戦や開票結果を振り返って。
 当初から厳しい戦いになると予想していた。私は昨年12月に国土交通省を退職し、知名度ゼロ。他の3候補は選挙経験や知名度があり、背中を追いかける気持ちだった。市民の皆さんが私を認識して思いに共感し、支援が広がり、ようやくここまで来た。
 人口減少を食い止めるために、経済再生と少子化対策を「車の両輪」で進め、国・県・市や民間企業、何より市民が主役の「オール長崎」態勢で取り組む必要があると訴えてきた。その考えに多くの市民の賛同をいただいた。私に投票しなかった方にも「鈴木史朗に任せて良かった」と思ってもらえる市政運営を心がけていきたい。
 -市長としての情報発信をどうするか。
 交流サイト(SNS)やオンライン発信も大事だが、生身の交流をして思いを伝える大切さも再評価されていると思う。市内各地でミニ集会を開き、市民と直接対話する機会をできるだけ多くつくる。
 -11、12月に米ニューヨークで核兵器禁止条約の第2回締約国会議が開かれる。参加する考えは。
 両親が被爆者で、私は被爆2世。「核なき世界」の実現に向けた思いはずっと強く持っている。各国に対して被爆の実相を伝えるのは長崎市長の務めだと思う。さまざまなタイミングを捉え、国際会議の場で実相を伝える努力をしていきたい。日本政府にも核兵器禁止条約の早期署名や批准、締約国会議へのオブザーバー参加を求めていく。
 -「被爆体験者」問題にどう向き合うか。
 被爆体験者も被爆者と同様に高齢化が進んでおり、一刻の猶予もない。特に健康被害が出ている方については、可能な限りの救済範囲拡大を国に求めたい。被爆体験者にも直接会って話を聞き、参考にしたい。
 -1期目の抱負を。
 今年は先進7カ国(G7)保健相会合があり、来年は「長崎スタジアムシティ」がオープン。そういった新しい動きもある中で、長崎は生まれ変わったと内外にアピールできるような市政運営に取り組みたい。

◎佐世保 宮島大典さん(59)/市民目線で市政運営

 -当選から一夜明けて心境は。
 うれしさと安堵(あんど)感、そして市政をしっかりと前に進めていく使命を痛感しており、身の引き締まる思い。市民目線で市政を運営し「宮島が市長になってよかった」と思ってもらえるよう頑張っていく。
 -最初に取り組むことは。
 「99の政策」というボリュームある内容を掲げたので、市役所職員や議員、市民の声を聞き、公約をブラッシュアップさせたい。政策の「一丁目一番地」は人口減少対策。選挙戦では特に子育て支援と教育の充実を訴えた。保育料の完全無償化や中学校給食費の無償化は状況を見極めながらできるだけ早く実行したいと考えている。
 -国会議員や県議を務めた経験をどのように生かしていくか。
 国会議員時代の仲間は現在、政権の中枢にいるので、パイプを生かして基地問題をはじめとした国政にかかる部分を推進していきたい。県と連携し、佐世保市の活性化に努める。互いに財政的に十分ではない中で補完し合い、協力していく。
 -石木ダム建設について。今後、現地に入る考えは。
 全くの白紙だが、可能であれば早く、お邪魔したい。どういう形で進めた方がいいのか県と考えていきたい。
 -カジノを含む統合型リゾート施設(IR)は継続審査となった。
 継続審査になった理由をしっかり精査しながら問題点を解消し、県と一緒に国に働きかける。
 -選挙戦では米海軍佐世保弾薬補給所(前畑弾薬庫)の移転・返還に強い意欲を示していた。
 衆院議員1期目の時に、佐世保の港のすみ分け問題に関わることができた。この十数年の中で東アジアの安全保障環境は大きく変わってきている。国と連携し、時代や状況に合わせて柔軟に取り組んでいく。
 -市議会で多数派を占める自民党は、選挙戦で相手候補を推した。議会対策は。
 今回の選挙は「オールさせぼ」という旗印を掲げ、自民系の方にも応援してもらった。市議会の自民系の皆さんともしっかり話し合いをしながら、新しい市政に理解を示してもらえるよう努力していく。政党や立場を超えて多くの皆さんの意見を聞けるような受け皿をつくっていきたい。

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