日本代表DF冨安健洋がプレーするアーセナルは数多の有望選手たちを抱えてきた。
そのアーセナルアカデミーに所属していた元ユース選手が四肢麻痺に苦しんでいると『Independent』が伝えている。
23歳の彼はダニエル・ケインさん。電気技師・エンジニアの資格を持っており、あのGoogleで働いた経験があるそう。
だが、2020年6月に友人たちと夜遊びに出かけた際、人生を一変させる出来事に遭う。
友人たちは“おかしな色”になったケインさんが意識を失っていることに気付くと、救急車が到着するまで心肺蘇生を試みた。救急車が到着して24分後に鼓動は再開したものの、ケインさんは酸素不足によって脳と脊髄に深刻なダメージを負った。
医師は目覚めたとしても植物状態になると宣告したが、ケインさんは25日間の昏睡状態を経て、意識を取り戻すと認知機能も徐々に戻り始めたそう。短期記憶には大きなダメージがあったものの、長期記憶は失われなかった。
母親は、目を覚ましたのは「奇跡」としつつ、こう話している。
「彼は大勢の人と一緒にいて、その夜に多くのことが起きました。
彼はスパイクされたと思います(飲み物に薬物や毒物を混入されること)。
意識を取り戻した時、息子は何もできず、動くこともできず、新生児のようでした。
でも、看護師は、彼は目(の動きで周囲を)で追っていると。
徐々に回復していて、常によくなっています。子どもの頃からの長期的な記憶は全部覚えているんです。
私は母親ですから、受け入れて、できることをするだけですが、負担は本当に大きかったです。
コロナのせいで看護師から色々なことを教わるために病院に入ることもあまり許してもらなかったんです。腸や膀胱の管理があったり、皮膚もとても敏感。ライフスタイルは完全に変わりました。
息子にとってとてもつらいものでした。様々な神経病棟にいましたが、周りは主に50歳以上の脳卒中患者の方たちで、同年代の人があまりいなかったからです。
彼はカウンセリングを受けるとPTSDで、気分の落ち込み、鬱、不安症だと診断されました。
ちょっとしたことに飛びつくので、多くの安心感が必要なんです。いま何が起きているのか、次に何が起きるのかを知っている必要があるんです。
彼は理学療法士にとてもよく反応します。運動している時は幸せな場所にいるようです。それができないときは悔しがるんですよ」
2年半ほど病院やケアハウスを転々とした後、最終的には自宅に戻ることができたものの、現在も車椅子で24時間体制の介護が必要だという。
1年以上待った末に、一家は適切な家に引っ越したが、寝室が3部屋から2部屋になったため、兄妹は別の家に移ることになったそう。
現在、ケインさんはもう一度立ち上がるために集中的なリハビリ治療を受けている。
英国民保健サービスが一部を負担するものの、費用は1時間あたり60ポンド(1万円)以上、1カ月で1008~2016ポンド(16~33万円)ほど。最低でも2~3年以上のリハビリが必要で年間12,906~24,192ポンド(202~405万円)ほどの費用が必要になる。
そのため、一家はクラウドファンディング「GoFundMe」で治療費を集めるキャンペーンを開始。兄妹は1ポンドでも助けになると寄付を呼び掛けている。
そんなケインさんの回復を祈って、アーセナルは選手たちのサイン入りユニフォームを贈っている。