社説:衆参5補選 政治不信、重く受け止めねば

 与野党対決の構図となった衆参5補欠選挙は、自民党候補の4勝1敗となった。

 岸田文雄政権の「中間評価」とも位置付けられ、1議席を上積みした。

 ただ、3選挙区で接戦となり、野党の足並みの乱れに助けられた感も否めない。保守地盤の衆院和歌山1区では、日本維新の会の新人に敗れた。

 防衛費増額や少子化対策の財源など、国の将来を左右する重要テーマが論点だったにもかかわらず、投票率が前回選挙と比べて約15~8ポイント低下したのは深刻である。

 閣議決定だけで安全保障政策や原発政策を大転換する岸田政権に対し、有権者の中にあきらめや不信感が広がっているのではないか。

 それを追認するばかりの国会の機能不全も、投票行動の停滞を招いている面があろう。

 与野党とも、選挙結果を謙虚に受け止めねばならない。

 昨年7月の参院選以来の国政選挙となった。自民の快勝は、安倍晋三元首相の死去に伴う衆院山口4区にとどまる。

 同山口2区は、岸信夫前防衛相の長男が初当選したが、世襲批判などで、野党系候補に約5800票差に迫られた。

 同千葉5区や参院大分選挙区は大接戦での辛勝だった。

 政治資金規正法違反事件で薗浦健太郎議員(自民離党)が辞職したことに伴う千葉5区は、野党候補が乱立して「政治とカネ」への批判票が分散した。敵失ともいえよう。

 和歌山1区では、首相らの応援入りにもかかわらず、維新に和歌山で初の小選挙区議席獲得を許した。先の奈良県知事選でも勝利した勢いに押された。

 共同通信の出口調査では、5選挙区で自民候補が無党派層を取り込めていない傾向も浮き彫りになっている。

 野党第1党の立憲民主党は全敗した。与野党の一騎打ちに持ち込んだ参院大分選挙区で、互角の戦いになったことをみても、野党共闘が鍵を握るのは間違いない。「自民1強」に対抗するためには、野党連携の再構築に向けた主導力や、共闘の軸を打ち出す戦略を欠いているのは明らかだ。反省を踏まえた仕切り直しを急ぎたい。

 岸田政権が補選を4勝したことで、衆院の解散・総選挙が早まるとの観測も聞かれる。

 だが、前回衆院選から1年半。防衛力の増強や少子化対策の財源、原発活用などで岸田政権は国会で十分な説明を尽くしていない。党利党略だけで政局に走るべきではない。

 投票率は統一地方選の後半戦も過去最低が相次ぎ、無投票当選も目立った。

 京都、滋賀の当選者には、人口減少下の地域再生に向け、首長と地方議会による「健全な二元代表制」を実現し、活発な議論を求めたい。

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