もうすぐ届く【住民税決定通知書】には金額ミスがあることも…よゐこ有野「それ誰の責任?」

お笑い芸人・よゐこの有野晋哉さんが、毎月さまざまな専門家をゲストに迎えて、お金の知識を身に付けていく「お金の知りたいを解決!お金の学園〜学級委員・よゐこ有野晋哉〜」。2023年4月は会計士・税理士でYouTuberの山田真哉先生に「税金」について、弁護士でタレントの三輪記子さんと一緒に伺いました。

今回は、「住民税」について伺いました。毎年、5月から6月に届く「住民税決定通知書」ですが、ちゃんと確認しないと間違いがあるかもしれませんよ?


有野晋哉(以下、有野): 税金の授業も今回で最後か~。税金ってめちゃくちゃ身近なのに、意外と知らんことが多いもんやな。三輪ちゃんは全部知ってたの?

三輪記子(以下、三輪):弁護士業務の中で、相続税とか譲渡税とか、どうしても税金の問題からは逃れられないので、その度に税理士の先生とも協力させてもらってるんですけど……自動車税のように頻繁に制度変更が行われていると、全てを把握するのは難しいですね。

有野: 税理士のような専門家でも、全部は把握していない人がいるって先生も言っとったしなぁ。他の税金についても、よく見ておかないと知らず知らずのうちに損をしてるかもしれへんね。

三輪:そうですよね。有野さん、今回は真面目に授業を聞きましょうね!

有野:それだと俺がいつもはちゃんと聞いてないみたいやん(笑) いやいや、しっかり聞いてます! だから前の授業で聞いたNISAとiDeCoも始めたわけやし。

三輪:それは失礼しました(笑)

住民税の内訳を知ろう

山田真哉(以下、山田):それでは、今回は「住民税」についてお話したいと思います。なんで数多くある税金の中から、住民税を選んだのかわかりますか?

有野:え~っと、ちゃんと支払っていないと住めへんから? 手続き次第で、実は払わなくってもいい税金だから! そんなん無いか (笑)

三輪:地方自治体の公共サービスに関わるものだからですか?

山田:三輪さんがおっしゃる側面は確かにあります。しかし、住民税を選んだ理由は、実は非常にミスが起きやすい税金だからです。

有野:そうなんですか? お役所がやってるのに、ミスなんて起きるんや。たくさん取られてるかも!

三輪:確かに人間の手でやっていれば、どうしてもミスは起きるでしょうけど、「起きやすい」というのは意外です。

山田:住民税は、その地域に住んでいる個人に課される地方税の一つで、市町村と都道府県のそれぞれでかかります。住民税という名称で知られていますが、それは総称であって、正確には「市町村民税」と「道府県民税」が合わさったものの呼び方なんですね。東京に住んでいる方の場合のみ、「都民税」と「市町村民税」、23区に住んでいる場合は「特別区民税」と少し呼び名が変わりますが、内容は変わりません。

有野:ややこしいなぁ〜、内容一緒なら住民税で統一したらミスもないのに。

山田:地方税法の絡みでそう呼び分けているんですが、あまり気にしなくてOKです。住民税の税額は、所得に応じて課せられる税金が変わる「所得割」と、所得の多い少ないに関わらず一定額を負担する「均等割」の合計になります。「均等割」はだいたい5,000円程度と思ってもらえればいいでしょう。一方、「所得割」の税率は一律10%です。

有野:年収じゃなくて所得の10%? そんなに持っていかれてるんや。じゃあ、何か買おうとしたら、まず稼いだお金から10%引かれてて、さらに消費税でも10%引かれて、ダブルで20%も取られてるってことやん!

三輪:いや、ちょっと違いますけど……でも、確かに損してる気分になりますね。

山田:税率を聞くと、確かに高い印象を受けるかもしれませんね。ただ、計算は「収入」ではなく「所得」がベースなので、収入から「給与所得控除」などの必要経費が差し引かれた後の金額になります。

三輪:10%だと、有野さんだったらいくらになるんですか?

有野:えっとねぇ、だいたい月に米三俵……って、言えるか!(笑) こんなノリ突っ込みじゃぁ、所得減るわ。

山田:難しく考えず、ざっくり「収入が多ければ住民税も増える」と覚えておけば大丈夫です。

三輪:会社にお勤めの人であれば、そのあたりの計算はすべて会社がやってくれますよね?

山田:そうなりますね。年末調整は給与所得者、つまり会社員が1年の間に概算で徴収された税額をきちんと計算しなおして、正確な所得を割り出し、所得税の納税額を確定させる作業です。通常、会社員は確定申告をする必要はありませんが、副業による所得が年間で20万円を超える人や、医療費控除などがある人は確定申告をすることで住民税も計算されます。

iDeCoやふるさと納税制度で記入ミスが多発?

有野:会社の経理の人は、年末と年度末はめっちゃ大変そうですね。

山田:年末は社員全員の年末調整をしないといけないので、1年の中で最も忙しい時期でしょう。年末調整によって所得税額が確定したら、その情報が地方自治体に送られ、今度は地方自治体側がチェックをして、その地域に住む人に対して「住民税決定通知書」を送ります。有野さんの家にも届いていると思いますが、目を通されたことはありますか?

画像:総務省「納税義務者用の特別徴収税額決定通知書の記載内容の秘匿」より引用

有野:見たことないなぁ。そのあたりの書類は、全部、経理の妻がやってくれてます。独身の頃は封も開けて……よく分からんなって、税理士さんに渡してましたね。

山田:実際、そういう方が多いんじゃないかと思います。ここで注意したいのが、先ほどお伝えした「ヒューマンエラー」なんですよ。その「住民税決定通知書」の内容が間違っていることが少なくないんです。

有野:え~っ、アカンやん! でも自分で見てもよくわからへんし……。

山田:ここまでの話で、ミスが出るとしたらどのあたりになると思いますか?

三輪:やっぱり、役所側の作業でしょうか? 人口が多い地方自治体だと、膨大な数になるでしょうし。

山田:まず、会社の年末調整の書類作成が第一段階。次に、確定申告の書類作成が第二段階。そして、これらの情報を元に作業する役所の作業が第三段階。この全てでミスが起こり得るわけです。

有野: でも、いまならコンピューターが全部やってくれるんでしょ?

山田:確かに、計算はすべて経理関連のソフトがやってくれますが、数字を入力するのは人間です。特に、先ほど有野さんが話されていたiDeCoについては、かなり間違いが多く見られますね。

有野:うそ~、なんでiDeCoだけ!? せっかくこの前始めたところやのに、そんなこと言われたらめっちゃ不安になるやん……どういうことなんですか、先生。

山田:たとえば、会社員ならiDeCoを始めたことを会社に申告していないと、当然、iDeCoによる節税効果の恩恵は受けられません。自治体に寄付を行う代わりに、その地方の特産品などを受け取れる「ふるさと納税」の制度についても、やはり間違いが見られますね。

三輪:そうなんですね、ふるさと納税はやってる人も多いですよね?

有野:僕もやってるし、スタッフもやってる人多いですよ。でも、ふるさと納税で起きるってことは、ほかの税金についても同じことが起きる可能性があるってことですか?

山田:住民税については、会社側や役所側の処理件数が膨大なことに加え、iDeCoやふるさと納税など比較的新しい制度が加わったことで、ミスが起こりやすい状況になっていると言えます。これらの情報は、すべて「住民税決定通知書」に記載されているので、iDeCoやふるさと納税の制度を利用している人は、書類が届いたら、一度ご自身の目で確認してみることをお勧めします。

税金のミスは自己責任!

有野: でも、その「住民税決定通知書」にiDeCoの情報なんて書いてあったけなぁ……見た記憶ないわ。

三輪:さっき、「全部、経理の妻がやってくれてます」って言ってませんでした?

有野: あ、だから見た記憶ないんや(笑)

山田:「住民税決定通知書」の明細を見ると、前ページの所得控除欄の中の「小規模企業共済」という欄がiDeCo、ふるさと納税がある場合は摘要欄に「寄付金税額控除」という形で載ってきたりします(自治体によって書き方は異なります)。特にiDeCoは名称が違うので、ピンとこない人のほうが多いかもしれませんね。

有野:役所からの書類だから、正しいものと思ってしまいそうやなぁ。小規模共済等控除て欄を気にしよう。

山田:ほかにも、子どもが生まれたのに会社、あるいは税理士に伝えていないとか、さまざまなところでミスは起きます。ふるさと納税をした場合、寄付金控除を受けるには確定申告が本来必要ですが、確定申告をしなくても寄付金控除が受けられる「ワンストップ特例」という制度があるのは、ご存じですか?

三輪:私は確定申告しているので利用していませんが、名前は聞いたことあります。

有野:俺も名前だけ。ふるさと納税やるたびにネットで聞かれる。税理士さんに無視していいです、って言われてるから、ワンストップしないで、ゴーしてる。でも、どんな制度なんですか?

山田:この「ワンストップ特例」、会社員はふるさと納税先の役所とのやり取りだけで、寄付金控除が受けられる制度なのですが、住んでいる地域の役所とふるさと納税先の役所との間で情報のやり取りがされるので、ここでも凡ミスが多発しているんですよ。

有野:こっちでやり取りするんじゃなくって、役所同士でやって貰えるのが「ワンストップ特例」なんや。でも凡ミスは怖いなぁ。そういうミスって、誰の責任になるんですか?

山田:税金は「自己申告」の制度なので、役所側がミスをした場合でも、そのミスに気付かなかった自分の責任になります。実は、「住民税決定通知書」などの税金関連の書類には、「内容が違っていたら異議申し立てしてください」といったことが書いてあるんですよ。ほら、ここに書いてあるでしょ?

画像:総務省「納税義務者用の特別徴収税額決定通知書の記載内容の秘匿」より引用

三輪:字ちっちゃ! きちんと目を通そうと意識しても見落としてしまいそうですね。

有野:そういえばこの前、都内の時間極めの駐車場にクルマを停めてんけど、長く停めるから、最大料金が決まってる所に。停車して看板見て、ってしながらウロウロして、ココが一番安いって入ってん。仕事終わってクルマを出そうと会計したらバカ高くて、「えぇ~っ!最大料金と違う! なんでこんなにすんの!?」と思って、よくよく看板を見たら、小さい字で「最大料金はNo5、6、7のみ」って書いてあるんよ。その3台だけ? ずるぅ~ってなったんです。これはそれと同じ手口ですよ。

三輪:手口って、犯罪みたいに言わないでください(笑) でも、運営側からしたら「ちゃんと書いてありますから」って言えますもんね。

税金関連の書類は、きちんと目を通すことが大切

山田:やはり、届いた書類は自分の目できちんと確認することが大切です。ちなみに、住民税決定通知書の内容の間違いについては、6月末にある1回目の納付期限までには申し立てをしておいたほうが良いです。だいたい5月から6月にかけて送られてくるので、今度はちゃんと封を開けてくださいね(笑)

有野:はーい。老眼鏡かけて、妻とダブルチェックします!

三輪:数字がおかしいなと思ったら、やっぱり税理士さんに聞くのがいいんでしょうか?

山田:そうですね、金額を確認してみて違和感があるようでしたら、顧問税理士がいるならその税理士に、いなければすぐに役所に問い合わせてみるといいと思います。

有野:やっぱり自分できちんと確認すべきなんやね。芸人も、台本を渡されてそれ通りにやってるだけじゃ、伸び代があらへんやろうし。ココでこれ言うていいですか、とかやらないとね。

三輪:芸人さんの事情についてはわかりませんが、税金についてはいろいろと勉強になりました!

山田:今回は固定資産税、自動車税、住民税と、みなさんの生活に密着した税金に絞ってお話ししてきましたが、ほかにもみなさんと関わりが深い税金がたくさんあります。ここで話しきれなかった内容も少なくありませんので、気になるかたは私のYouTubeをご覧いただければと。

有野: あ~っ、宣伝しだした! 僕も10月29日(日)に、ゲームセンターCXの20周年イベントをさいたまスーパーアリーナでやりますので、来月チケット発売です! よろしくお願いしま〜す。

三輪:もう有野さん、先生と張り合ってどうするんですか(笑)

有野三輪:山田先生、どうもありがとうございました!

5月からは、ファイナンシャルプランナーの塚越菜々子( @fp_nanako )先生をお迎えし、「保険」について学んでいきます。次回は5月9日配信予定。

有野晋哉
1972年2月25日生まれ。大阪府出身。テレビやラジオ、CM、雑誌の連載などマルチに活躍。コンビで公式YouTube「よゐこチャンネル」も開設しており、幅広い世代から支持を得ている。自身が50歳を迎えた2022年に、お金にまつわる知識の大切さに目覚め、日々勉強中。

三輪記子
東京大学卒業後、立命館大学法科大学院を経て司法試験に合格。2017年より第一東京弁護士会に所属。弁護士として法律相談、法的問題のセカンドオピニオンや交渉、調停、審判、訴訟の代理人などを務める。主に中小企業や個人事業主の顧問弁護士として活躍するかたわら、松竹芸能に所属し、テレビやラジオなどメディアにも出演。ゲストを交えて時事問題を法的観点から語るYouTubeチャンネル「みわたまチャンネル」も手掛ける。

山田真哉
公認会計士・税理士・芸能文化税理士法人会長。大阪大学文学部卒業後、東進ハイスクール、中央青山監査法人/プライスウォーターハウス・クーパースを経て独立。小説『女子大生会計士の事件簿』(角川文庫他)はシリーズ100万部、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(光文社)は165万部を超えるベストセラーを記録した。個人のYouTubeチャンネル「オタク会計士ch【山田真哉】少しだけお金で得する」は登録者数約60万人。公職として2016年から内閣官房行政改革推進会議WG委員、株式会社ブシロード等の監査役を務める。

ライター:新井奈央 / 写真:文化工房

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