<社説>投票率低下 議会制民主主義の危機だ

 投票率の低下、議員のなり手不足が深刻化している。23日に投開票された統一地方選の後半戦にその影響が如実に表れた。立候補者が定数に満たない議会もあった。「議会制民主主義の危機」との指摘も上がる。制度の抜本的な見直しが急務である。 統一地方選の後半戦は280市議選、55町村長選、250町村議選の投票率が過去最低を更新した。

 無投票を除く63市長選は47.73%で、過去最低だった前回2019年をわずかに上回ったが、過去2番目の低さとなった。

 統一選前半戦の9知事選や41道府県議選、そのほか政令市の市長、市議選もいずれも40%台で、過去最低の投票率だった。

 有権者の半数以上が投票していない。住民生活に直結する政策課題を審議し、地域の進路を決定する首長や議員の選出に有権者の半数以上が関わっていないことになる。

 昨年9月実施の沖縄の統一地方選で、24市町村の投票率は62.07%だった。町村で89~90%台がある一方、市部でどうにか50%超えのところもあった。知事選も低下傾向にある。投票率の低迷は沖縄でも避けて通れない問題だ。

 託すべき魅力ある候補者がいなければ、投票を見合わせる人もいるだろう。議員のなり手不足も深刻だ。

 議員の人材確保の難しさの背景には人口減や高齢化がある。高知県大川村はなり手がおらず、前回の統一地方選の前に議会廃止を検討し、注目を集めた。過疎地域や小規模自治体に共通する課題だ。

 総務省は、有識者らによる地方議員に関する研究会を設け、なり手不足を議論した。現行の議会制度に加えて少数議員による集中専門型など新たな仕組みを選べるよう提起する報告書をまとめた。同省の別の研究会も報告書を出したが、議論は停滞している。国は議論の軸となる方向性をいち早く提示すべきだ。

 さまざまな声を行政に反映させる仕組みとして「くじ引き民主主義」の技法を導入する自治体もある。住民から無作為に選んだ代表者によって議論をしてもらい、政策決定に反映させる取り組みだ。

 欧州発のツールを活用する例も出てきた。兵庫県加古川市は合意形成ソフトウエア「デシディム」を導入した。オンラインで意見を集め、議論を集約し、中期計画の策定などに活用した。

 新たなシステムの活用を通じて、多くの住民が政策決定過程に参加することで、議員になる人材の発掘につなげることも可能だろう。

 沖縄では来年、県議選が控える。前回20年の投票率は初めて50%を下回る46.96%だった。検討された区割り変更は見送られ、現行選挙区での実施となる。1票を行使する有権者の心がけはもちろんだが、多様な立候補者による論戦が深まれば、投票率の上昇も見込まれる。

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