やったぜ、大地

 人工知能(AI)の形勢判断は大きく傾いていたが、対局者はそのことを知らないし、機械と違ってヒトには恐怖心や警戒心があるから、AIの読み筋通りに局面が進むとは限らない。タイトルへの挑戦を懸けた大一番。絶対に負けたくない-気持ちがぶつかり合う最終盤▲午前10時に始まった対局が決着した時、時計の針は午後8時を指そうとしていた。一昨日指された将棋の棋聖戦挑戦者決定戦、対馬市出身の佐々木大地七段が永瀬拓矢王座を下し、藤井聡太棋聖=竜王・王位・叡王・棋王・王将の6冠=への挑戦を決めた▲佐々木七段は1995年生まれの27歳。7年前にプロになり、勝ち星数や勝率のランキングでは毎年のように上位に名前を連ねてきた。通算勝率は7割を超える▲タイトル戦への登場は初めて。終局の直後、師匠の深浦康市九段=佐世保市出身=が「やったぜ、大地!」と一門のツイッターに書き込んでいるのを見つけた。文字が弾んでいる▲お祝いのショートメールを送ると「長崎の皆さんに見守られてるのはいつも実感してると思います。良い将棋を見たいですね」とすぐに返信をいただいた▲“藤井1強”が続く将棋界。ファンの心理は複雑だ。全冠制覇も見たいが、誰かが止めるシーンもそろそろ見たい…5番勝負の開幕は6月。(智)

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