福井県立病院の陽子線がん治療、患者数最多を記録 公的保険の適用範囲拡大や先進的な治療法導入で

福井県立病院、陽子線がん治療センターの治療患者数推移

 福井県立病院陽子線がん治療センター(福井市)の2022年度の治療患者数が219人となり、11年3月の開設以来初めて年間200人を超え、最多を記録した。22年4月から公的医療保険の適用範囲が拡大され、患者の費用負担が軽減されたことが主な要因。同センターが導入を進めてきた先進的な治療法も患者数増加に寄与した。

 陽子線がん治療の保険適用は16年に始まり、対象となるがんは昨年3月までは小児がんなど4種類だった。22年度から▽肝細胞がん(直径4センチ以上)▽肝内胆管がん▽膵(すい)がん▽大腸がんの術後局所再発―が新たに対象となり、治療を受けやすくなった。

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 県立病院陽子線がん治療センターは14年3月、コンピューター断層撮影(CT)の画像に合わせ、陽子線を当てる位置をミリ単位で調整する「CT位置決めシステム」を全国で初めて導入。前立腺がんの治療法として、放射線による直腸への障害を減らすことが期待できる「ハイドロゲルスペーサー留置術」を21年10月から採り入れるなど先駆的な取り組みを進めてきた。

 陽子線治療は、従来の放射線治療で用いるX線に比べ、正常組織にはより少ない線量、がん病巣にはより多い線量を与えることができ、副作用も抑えられる。県立病院経営管理課は「今後も陽子線治療のメリットや経済的負担を軽くする優遇制度を周知するとともに、治療期間短縮や副作用低減につながる治療技術向上に取り組んでいきたい」としている。

 センター開設から22年度末までの治療患者数は累計1887人。地域別では▽県内58.6%▽石川県13.1%▽富山県8.2%―など。年齢別では▽70代37.0%▽60代30.6%▽80代13.8%―など。部位別では▽前立腺30.4%▽肝臓14.9%▽肺12.9%―などとなっている。

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