深刻な地方議員のなり手不足…どうすれば解消? その打開策を議論

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG(モニフラ)」(毎週月~金曜7:00~)。「モニフラZ議会」のコーナーでは、全国で深刻化する“地方議員のなり手不足”についてZ世代とXY世代の論客が議論しました。

◆既得権益、メンバーの固定化…新人が当選しづらい地方議会

昨年11月の神奈川県大井町の町議会補欠選挙では、立候補者がいなかったため選挙が行われない異例の事態に。こうした地方議員のなり手不足は全国で深刻化しており、国会でも話し合いが行われています。

2019年の統一選では無投票当選となった都道府県議が、過去最高の26.9%。町村議も23.3%が無投票で当選しています。

地方議員のなり手不足解消に向け、まずはZ世代を代表し政治プラットフォーム「PoliPoli」代表の伊藤和真さんが「平均月給21万円かつ兼業規制という参加ハードルの再検討を」と主張します。

地方議員は薄給で専業だと生活が難しいこと挙げつつ、兼業ができるものの、そのルールが不明確なところも、立候補のハードルになっているのではないかと推察。ちなみに、議員の報酬(月額平均)は、国会議員が129.4万円、都道府県議会議員が81.3万円、市議会議員が40.7万円、最も低い町村議会議員は21.4万円となっています。

XY世代の新公益連盟 代表理事・白井智子さんは「(議員の)メンバー固定化」を危惧。

白井さんの周囲にも国会議員から地方議員まで数多くいるなか、「最も新人が当選しづらいのが町議会・村議会。その理由はメンバーが固定化しているから」と指摘します。そうした地域では立候補者が決まっており、新人や女性議員が少ないことなどにも触れつつ「地方の名士、力のある人が議員を続け、それ以外の人が新たに参入しづらい状況が何十年も続いている」と悲嘆。

XY世代のキャスターの堀潤は、白井さんの意見に同意しつつ「議会改革を」と訴えます。

既得権益の問題を挙げつつ、「やはり地方議会は有力者たちが支えてきたようなもので、だからこそ(議員が)硬直化してしまう。なので、任期を変えるなど改革が必要」と力説。また、地方議会の問題点として「KPI(重要業績評価指標)」の希薄さにも言及。「地方政治では何がゴールで、いかにそれを達成し、それをどういった成果にするのかといった指標がない」と指摘します。

microverse株式会社 CEOの渋谷啓太さんは、「会社を経営していて思うのは、給料を上げれば人が来るのかといえばそうでもない。優秀な人は働く場所がたくさんあるので、給料を上げても来ない」と言い、「いかに魅力的でやりがいがあり、人生を懸けていいと思える職種かどうかという観点が大事」とお金以外のインセンティブの重要性を挙げます。それを踏まえた上での議会改革、さらには魅力の訴求を求めます。

伊藤さんは、「優秀であればどこでもやっていけるが、稼げない人もいる。そうした人たちも議会に参加することも大事」と誰もが議会に参加できる環境を望みます。

給料の問題については、白井さんもその低さを慮り、日本全体で賃金が上がらないことが社会課題となっている現状を憂いながらも「(議員は)やはり余裕がある人しかなれない分野になっていることは確か。そこは変えていかなくてはいけない」と改めて喚起。

◆議員はお金がかかる…より良い政治のためには給料増額が必要!?

現在2期目でサラリーマンをしながら議員活動を行う現役議員、新潟県佐渡市の広瀬大海市議会議員に話を聞いてみると「佐渡市の場合は(月給)26万円程度だが、全て生活費に使えるわけではなく、普通に生活できるような状況ではない。議員一本ではなかなか厳しい。選挙に落ちればただの人になるので、そのリスクはすごく大きい」と語ります。

そして、企業と議員の両立には企業の協力が欠かせないそうで「議員活動が主だった仕事になるので、民間の仕事は正直疎かになっている部分もある。会社がそれを認めてくれるかどうかが問題」と厳しい状況を明かしてくれました。

地方議員のなり手不足解消には、政府も本腰を入れています。12月に答申があった政府の「地方制度調査会」では、報酬水準の見直しや夜間・休日に議会を開催すること、さらには議会のオンライン化なども必要だとされました。また、改正地方自治法では、兼業規制の緩和や企業に立候補休暇の導入を促す動きも出てきています。

広瀬議員は給料の全てを生活費に使えるわけではないと話していましたが、伊藤さんがその部分を解説。「政策を作る上での政務調査費も給料から出ている。良い政策を作るにはお金がかかる。.町村議会議員に比べ国会議員は報酬が高いが、ほとんどの国会議員は他の収入があるにせよ赤字」と語ります。なぜなら秘書を雇う費用や政策立案費用などさまざまなお金がかかるからで、「議員の給料、政策を作るお金は全体的に再検討すべきだと強く思う」と伊藤さん。さらに、「この国の政策レベルを上げるために何が必要なのかというのは、冷静に議論すべき」と議員のお金の問題に対しては改めて自身の考えを示します。

◆既存の構造を変える新たなコミュニティ、新たな潮流に期待

ここで堀は「コミュニティが大きくなりすぎている」と案じ、地方コミュニティ再編を提案。島根県の隠岐諸島・海士町では公務員も役所にいるだけでなく、街中でさまざまな仕事に従事する「半官半X」という取り組みを行っていることに触れ、「このメリットは街全体で各セクターの人たちがいろいろなことを知っているから、水産業から観光業、暮らし、お年寄りのコンディションまでいろいろな人が関わり続けられる」と堀。

「チームで地域の政治を行うことができる範囲に地域を再編成したほうがいい。「2,000人~3,000人ぐらいのコミュニティを作ってやってみたらどうか」と策を唱えます。

堀の意見に、白井さんも同意し「海士町に行くと、誰が民間で誰が公務員かよくわからない。みんな副業・兼業している。なぜなら人が足りないから」とその理由を語ります。現地ではみんな自然に、楽しくやっているそうで「海士町はひとつのモデルケースになると思う」と力を込めます。

これはあくまで海士町の規模感あってのことですが、大都市でも応用できるのか。渋谷さんは「数の問題であれば、大都市も区切ればいい。数千から数万のレンジのコミュニティを作り、そのコミュニティ内で1度実験してみればいい」と話します。

渋谷さんが活動する次世代ウェブ領域「Web3」もまさに同じような状況で、正解がまだないため、実験が必要。それを現実でもやればいいと渋谷さんは語り、「小さなコミュニティをサポートするテクノロジーはすでにあるので、実験を重ねて最適解を見つけていけばいい」と新たな挑戦を促します。

最後に、この日の議論を受けた総括、Z議会からの提言を、伊藤さんが発表。地方議員のなり手不足解消のために必要なことは「議員というキャリアへのハードルの検討(国民からの議論を)」。

給料問題について、「議員から『給料を上げてくれ』というのは言いづらい。当然国民の反発もあるが、冷静に議論することを国民からあげていくことが大事。僕たち国民に主権があるので決め方を決める、そこをしっかりと議論すべき」とまとめます。

白井さんは「有権者の声が反映されるかたちに」と切望。「これは民主主義の基本のはずだが、実際はなっていない」と惜しみ、「副業・兼業などで現役世代の声が反映されることは大事」と訴えます。

堀は、地方移住者が増加している現状を鑑み、「そろそろ移住者が各地域でまとまり、政治グループを作って議会を変えていくことが始まりそうなので、まずは繋がり合うところから」と新たな潮流に期待を寄せていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

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