外苑再開発 賛否分かれる計画は…

明治神宮外苑の再開発を巡り、文化遺産保存の専門家らでつくる日本イコモスが事業者に出していた質問に対し、三井不動産が4月27日見解を明らかにしました。

まずは再開発の概要を振り返ります。明治神宮外苑の再開発では、神宮球場や秩父宮ラグビー場を解体して場所を入れ替える形で新しい競技場を作ります。さらに、商業施設などが入る高層ビル2棟を建て、中心にはこれまでに無かった広場も作る計画となっています。

三井不動産などの事業者は再開発の意義や必要性について、施設の老朽化や広場などが不足していること、地区内の回遊性の不足などをあげていて、この再開発でより使いやすく便利になるとしています。またこの開発による自然への影響については、神宮外苑の象徴でもあるいちょう並木を保存することや、みどりの割合を25%から30%まで増加すること、樹木の本数を1904本から1998本まで増やすことなど、計画によってより緑化が進むとしています。

しかしこれに待ったをかけたのが、世界遺産の審査などを行う国際組織イコモスの国内団体「日本イコモス国内委員会」です。再開発の樹木の評価や整備の内容に虚偽の説明があり、自然や生態系の破壊に繋がるとして5項目、58の指摘を行い分かりやすく説明するよう、事業者や東京都に求めてきました。

この指摘に対し、三井不動産が4月27日、イコモスの指摘について虚偽はなかったと反論しました。

日本イコモス国内委員会 石川幹子さん:「社会的な責務に関するご回答はほとんどゼロでしたので」

明治神宮外苑では、老朽化した神宮外苑と秩父宮ラグビー場の入れ替えなど、再開発にむけて3月から工事が本格的に始まりました。再開発を巡っては3月、亡くなった音楽家の坂本龍一さんが小池知事に中止を求める手紙を出すなど、樹木の大量伐採や外苑のシンボルであるイチョウ並木への悪影響などを懸念する声があがっています。

これらに対し、4月27日に開かれた環境影響評価審議会で、神宮外苑の再開発の事業者である三井不動産は、これまで日本イコモスから受けていた質問に対し「すべて虚偽ではない」という認識を示しました。

三井不動産:「森林部分ではないため調査方法が適切ではないと指摘を受けている。各調査地点では森林を形成する植栽部分としていちょう並木、スタジアム通り、事務所を含めて調査をしておりますので誤りとは考えておりません」

この審議会を受け日本イコモス国内委員会が会見を開き、主張のもととなる調査への危機感をあらわにしました。

石川さん:「学術調査としてはレベルに達していない。断言します。低レベルなんてもんじゃない、学術調査になってないからすぐやってねと」

日本イコモスは4月27日の審議会に参加できるよう都に要請していましたが、審議会は「事業者とほかの団体が意見を戦わせる場ではない」として認めませんでした。

両者の訴えに対し、東京都が事務局を務める審議会は「今回確認した部分に虚偽や誤りはなかったと確認した。ただ事業者のこれまでの説明や評価書には誤解を生じるような表現があった」としています。

そして4月27日、三井不動産はイコモスからの指摘について回答しましたが、イコモスが指摘する誤りや虚偽の説明はなかったとし、イコモスが指摘した全58項目のうち、「指摘自体に事実と異なる内容が含まれるもの」が約半数、「考え方や解釈の違いに基づく指摘」が約半数あったとしました。この回答にイコモスはすぐに反論し、「口が裂けても間違いだと言いたくないかのように思えた」「水掛け論ではなく事実は事実として認めてもらいたい」としています。

お互いの主張が平行線をたどってしまい、前に進んでいないように見えてしまいますね。事業者側が用意したイコモスの指摘とそれに対する回答が書かれた資料では、4月27日は、イコモスからの全58項目のうち、時間の制約もあり、37項目について説明され、残りについては来月の審議会で回答するとしています。

この資料についてですが、環境に関する専門用語が多く使われ、一般の人が読んでも理解するのは難しい内容となっている中で、事業者側が言う、「考え方や解釈の違い」と言われてしまうと、一般の人はどう捉えればいいのか、よく分からない状況となっています。

この両者の認識がどれくらい食い違っているかというと、保存樹木の認識としては、三井側は「そのまま残る」木を指し、イコモス側は「再開発後に新たな建築物ができ、環境が変化しても枯れずに残る」木という認識です。そして、切らずにほかの場所に移す樹木については、三井側は「他の場所に移す」認識ですが、イコモス側は「移した後も、枯れずに残る」という認識です。

事業者だけでなく、都民の方向を向いた丁寧な説明も求められそうです。

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