特別枠でル・マンに挑むNASCARカマロZL1、セブリングでの最終調整テストが完了

 ヘンドリック・モータースポーツが、6月10~11日にフランスで開催されるル・マン24時間で『シボレー・カマロZL1』のNASCAR改造車両を走らせる“NASCAR Garage56プロジェクト”の最終調整セッションが先週、フロリダ州のセブリング・インターナショナル・レースウェイで実施された。

 2日間のセッションで、ヘンドリック・モータースポーツのクルーはウエットコンディションを経験したほか、太陽が顔を出した後、高温の乾いた路面で走行する時間も手にしている。

 プロジェクトのクルーチーフを務めるグレッグ・アイブスは、「テストはうまくいったと思う」と語った。

「雨の中や炎天下、そして夜間。ウエットとドライの両方のタイヤを使い分けることができたのは、本当によかった」

「我々は充分にドライでの走行をしていたので、良い変化を得て走りたかったタイヤを固めることができた。また、その中でバランスを取ることができた」

「4人のドライバーを集めて、彼らひとりひとりにクルマの感触を確かめるための充分な時間を与えるのはいつも難しい。彼らは与えられた周回数とクルマのバランスに満足していたが、我々は戻ってからもやることがたくさんある」

 セブリングでのテストは、ジェンソン・バトン、ジミー・ジョンソン、マイク・ロッケンフェラーというドライバーラインアップと、バックアップドライバー兼コーチのジョーダン・テイラーが一緒にテストを行う4回目のセッションとなった。

 これまでのテストは、1月にデイトナ・インターナショナル・スピードウェイで2月にセブリング、3月にはサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)で実施されている。

 4人のドライバーは入れ替わり立ち替わりにシボレー・カマロZL1をドライブし、エアロやシャシーの開発など、さまざまな調整を行い24時間レースの本番に向けて準備を進めている。

「チームとクルマへの信頼が高まり、現地に行けば本当にいいものができるかもしれないと思えるようになった。見ていて本当に楽しかったよ」と語るのは、このプロジェクトを統括するヘンドリック・モータースポーツ競技部門副社長のチャド・クナウス。

「セブリングに来てみんなが車に乗り込んで出てくるとき、我々たちはこの件で成長できるかもしれないと感じていて、皆がうなずいている。それはとても楽しいことだ」

 なお、今回のテストではプライマリーカーのリスクを軽減するために、バックアップカーが主に使用された。

 これらのクルマは2日間で216周を走り、延べ758マイル(約1219km)を走破した。ル・マンに向けて、このプログラムのマシンは合計で6834マイル(約1万1000km)を走行しているが、その大部分はバックアップカーによるものだ。

テストは雨、晴れ、夜間とさまざまなコンディションのなかで行われた。

■ジョンソン「一生に一度のチャンスを手に入れたことに感動」

 ヘンドリック・モータースポーツのチームオーナーであるリック・ヘンドリックは、プライマリーカーとバックアップカーをチェックするために会場に足を運んだ。来月、ふたつのクルマは適度に分解され、フランスで開催されるル・マン第100回大会に向け、現地に輸送される予定となっている。

 既報のとおり、このクルマは“Next Gen”シボレー・カマロZL1レースカーの改良版であり、今年2月にデイトナで正式に発表された。システムやコンポーネントはNASCARカップシリーズを走るクルマとほとんど変わりないが、ル・マンで走るために専用の装備が施され、その中には夜間レース用のヘッドライトとテールライト、大型の燃料タンク、カーボン製ブレーキディスク、専用設計のグッドイヤー製イーグルレースタイヤなどが含まれている。

 ドライバーのひとりであるジョンソンは、「シボレー、ヘンドリック・モータースポーツ、グッドイヤー、そしてチャド(・クナウス)やグレッグ・アイブスとともに働くファミリーと一緒に、この一生に一度のチャンスを手に入れたことに感動している」と語った。

「非常にクールなレイヤーがたくさんある。それは本当に特別なことで、僕はとても感謝しているんだ」

 1年以上前のセブリングで、ヘンドリック・モータースポーツはNASCAR、シボレー、IMSA、グッドイヤーと共同で、2023年のル・マン24時間レースに“ガレージ56(章典外の招待枠)”として参戦することを発表した。

 アメリカのチームは今年2月にACOフランス西部自動車クラブから正式な招待状を受け取り、ヘンドリック・モータースポーツとNASCARの歴史に残るカーナンバーにちなんだ24番のゼッケンをマシンに装着する予定だ。

 最初の発表から13カ月が経過した今、マシンは100周年を迎える歴史的な会場に乗り込むまで2カ月を切ったところにいる。

「ヘンドリック・モータースポーツのバナーがル・マンのレーストラックを周回するのを見るのは、私にとってもっともエキサイティングなことだ」と、クナウス。

「8.4マイル(約13.6km)という難易度の高いトラックで24時間走り続けるレースカーのなかにヘンドリック・モータースポーツを見ること、NASCARを代表するヘンドリック・モータースポーツのチームメイトがそこにいるのを見ることは、私にとって世界を意味することだ」

ル・マンに挑戦するシボレー・カマロZL1は二日間のテストで1200km以上を走破。これまでのテストの合計走行距離は約1万1000kmに上る

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