「続・△パター戦争」 戦いは男子にも飛び火 “和合”でバッチバチ

中島の新しいトラスの転がりを見る河本力(左から3人目)(撮影/服部謙二郎)

◇国内男子◇中日クラウンズ 事前情報◇名古屋ゴルフ倶楽部 和合コース(愛知県)◇6557yd(パー70)

“三角パター”の本家本元であるテーラーメイド「トラス」と、新興勢力のキャロウェイ「トライビーム」の戦いぶりを、ツアーの現場から何度かお届けしてきたが、その情報はこれまで女子ツアーが中心だった。実はその戦火は、男子ツアーにまで及んでいる。しかも、いっそうヒートアップしているのだ。

バッチバチな戦況をお伝えする前に、まず女子プロのパター事情をおさらいしておこう。女子ツアーのパター使用率は、キャロウェイ(モデルは多種多様)とテーラーメイド(トラスやスパイダーなど)2社で実に9割近くを占め、中でも今年はトライビームシリーズとトラスシリーズががっぷり四つの戦いを見せている。長らくのトラスユーザーだった申ジエ(韓国)が、今月「KKT杯バンテリンレディスオープン」の試合からトライビーム(ダブルワイド)に変えたのには驚いたが、一方で川崎春花がテーラーメイドの新しいトラス(3代目)にスイッチするなど、毎週目まぐるしく使用者が入れ替わり、レポートするこちらも事実確認が追いつかないほどだ。

トライビームのセンターは「つかまるセンターシャフト」

一番手前がダブルワイドのセンターシャフト(撮影/服部謙二郎)

本題に入ろう。当初「男子ではこうしたいわゆる“異形”なものは流行らないでしょ」という声もあったが、意外や意外、「△ネック」に関心のあるプロは多かった。開幕戦「東建ホームメイトカップ」からトライビームの展開が始まると、「めちゃくちゃ興味があった」(宮本勝昌)とプロはこぞって飛びついた。

その開幕戦では6人がトライビームを使用し、翌週の「関西オープン」では13人が使用。あのクラブにうるさい池田勇太が同シリーズのダブルワイドCS(センターシャフト)にハマり、「機能としてもいいんじゃないか」と周囲のプロも見る目が変わってきた。ちなみに池田は「つかまるセンターシャフト」とそのパターを評価。「センターシャフトなのにグースがついていてつかまる。かといって左にいくわけでもなく直進性が強く、構えやすくてヘッドを操作しやすい」と太鼓判を押す。

ダブルワイドのノーマルかセンターシャフトかで迷う重永(撮影/服部謙二郎)

今週の和合の練習グリーンでも、赤い三角ネックがついたパターをそこかしこで見かけた。前出の宮本勝昌がツノ型(#7)をバッグに入れたほか、重永亜斗夢も「打感、フィーリングがいい。出球が出てほしいところに出るんです」とダブルワイドへ。「ミスヒットしたらミスじゃないですか、それって普通は打った瞬間にわかるんですけど、このパターはいい意味でミスがわかりづらい。打感とか転がりをミスっぽく感じないんですよね。打った感触は全部いい感じで当たる」。そのほか、出水田大二郎がダブルワイド、竹谷佳孝が6Mと、使用者はどんどんと増えている。

トラス3代目は「B4」が流行る予感

中島啓太の「B4 TH」をツアーバンで発見(撮影/服部謙二郎)

と、ここまでトライビームの攻勢を書いてきたが、ライバルはどうなっているんだと気になる方も多いだろう。トラスはこれまで契約選手がちらほら使う程度で、なかなかツアー全体に浸透するということはなかった。それも「男子ツアーではパターの展開をしてこなかった」という側面が大きいように思える。が、なんと、今週の和合の練習グリーンではテーラーのスタッフが新しいトラス6機種をズラリと並べて“お店を開いている”ではないか。いよいよ三角パターの本家本元も本腰を入れてきたか。実際、そのお店の前に男子プロがぞろぞろやってきて、新しいトラスを手に取っては試している。やっぱりみんな「△」が気になるんだなぁ~。

ここでトラス3代目の6機種を説明しておこう。2週前より女子ツアーで展開してきた新しいトラスシリーズ。ネックがカーボンになり、中に衝撃吸収のポロンを入れ打感を柔らかくしている。一方で三角の幅は維持し、ミスへのブレの強さは継続。そのラインアップも充実していて、ブレードタイプが3機種(B1TH、B3TH、B4TH)、マレットも3機種(M2TH、M2TC、M4TH)登場した。

女子ツアーではすでに実戦投入しているプロも多く、前述の川崎春花が「M2TC」を使い、渡邉彩香が「B4TH」を使うなど、幸先のよい滑りだしだ。※TCはトラスセンター、THはトラスヒールの略

新しいトラスを試打する片山晋呉。よく見ると横に片山のトライビームが1本…(撮影/服部謙二郎)

さっそくやってきたのが(やはり見に来るだろうなと思ったが…)、新しいギアに目がない片山晋呉。しかも片手にトライビームの6Mを持ちながら、トラスパターを物色。6機種をそれぞれ手にとってはクローグリップで素振りを繰り返し、「これとこれを作って」とテーラーメイドのスタッフにリクエスト(長さやロフト、おもりなどを片山専用にカスタム)。

片山が選んだのはブレードの「B4」とマレットの「M2TH」だった。特にB4は調整後に練習グリーンで長らく球を転がし、「いい感じ。今週はまだだけど後々の試合で投入がありそう」(片山)と好感触だった。

B4とはブレード型だがバック側が波を打っているような形で、キャッシュインをほうふつとさせる。そういえば、熊本の試合で不動裕理がこのB4を使ったというし、申ジエもトラス3代目はB4を選んだというから、“玄人受け”しているのは間違いない。新しいトラスの「B4」、これはなんか流行る予感がするな。

新しいトラス「B4 TH」はキャッシュインタイプをほうふつさせる(撮影/服部謙二郎)

と、そんな考えを巡らしていると、以前からトラスユーザーだった中島啓太(トラスTB1)が、 目の前でその「B4」を打っているではないか。聞けば、純粋なアンサー型の「B1」も試したが、「シュッとした見た目と座りがいい」(中島)と最終的にB4を選んだという。「今までより打感が柔らかくなったと感じています。ロングパットのときにボールが地面に食いつくような重い転がりがあってそれも気に入っています。直進性も強くて曲がり始めが遅いのはうれしいですね」(中島)。

ちなみに中島のB4は特注で、インサートをアルミに変え(これは以前と同様)、シャフトをカーボンからスチールに変えている(フルーテッドという打感の向上を狙ったシャフト)。中島以外にも池村寛世(B3)も新しいトラスにスイッチしていた。

中島は新しいトラス「B4 TH」をチョイス(撮影/服部謙二郎)

トラスの3代目を打っている選手に聞く限りでは、今回のトラスはだいぶ打感が柔らかくなったという声が多かった。前モデルまでは硬い打感を敬遠する選手もいたが、新しいトラスは評判が良い。トライビームとトラスの両方を交互に打っていた片山は「(打感は)トラスのほうが柔らかく感じた」と言うほど。

んー、こりゃ両者を同時に打ち比べてみたいな。テーラーとキャロウェイの関係者の方、もうこうなったら「呉越同舟△パター試打会」開いてくれませんか?(愛知県東郷町/服部謙二郎)

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