50年後の社会

 生保会社でつくる生命保険協会の1985年の広告コピーを見つけた。〈ベビーブームの僕達は老人ブームでもある〉。「時代を映したキャッチフレーズ事典」(電通)に収められている。どうやら個人年金の加入を促す広告らしい▲第1次ベビーブーム世代が30代後半になったこの頃、日本では65歳以上の人口が全体の1割を超えた。事典にこんな解説が添えてある。〈しかし高齢・少子化への認識はまだ浅く、公的年金への危機意識も芽生えていなかった〉▲ベビーブーマーはやがて分厚い高齢者層になります。備えは大丈夫ですか? 広告はそう問いかけたのだろう。時は流れて、広告コピーから85年後、今から50年後の社会は、想像を絶する「有事」に直面するらしい▲先ごろ公表された将来推計人口によれば、総人口は3割減って8700万人、65歳以上は4割に及ぶとされる。当然ながら働き手がぐんと減る▲推定によると、医療スタッフ不足で病院は診療待ちの人の列。道路の2割は修繕できず、道は穴だらけ。40年ほど前は〈危機意識も芽生えていなかった〉という年金問題は立ち行かないほど危うくなる…▲人口10万人ごとに商業圏をつくったりと、今から地域社会の設計が必要という専門家もいる。備えは大丈夫ですか? 問いかけを絶やすまい。(徹)

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