「自分で考えて決める」従業員に求め アルミ製部品を製造する町工場の社長

従業員と積極的にコミュニケーションを図る岡本さん(福知山市三和町芦渕)

 機械の音が響き油のにおいが漂う工場で、岡本真樹さん(41)=京都府福知山市=は、従業員一人一人に声を掛けて歩く。「ペット用ネームタグは何円だったら買う?」。製造中の商品への評価を聞いて回る。

 産業用ロボットや半導体製造装置に使われるアルミニウム製部品を製造する「コアマシナリー」(福知山市三和町芦渕)のかじ取り役を担って10年目。従業員約30人を率いて京滋を中心に約40社と取引する。社長自ら営業に追われる毎日だ。

 従業員に求めるのは「自分で考えて決める」姿勢だ。受注生産だけでなく、自分たちが作りたい商品を開発するプロジェクトを2019年に始動させた。従業員のアイデアを基にアルミ製の名刺入れやコースターを製作。今年1月にはペット用食器スタンドを開発し、クラウドファンディングを実施した。

 福知山で高校生までを過ごした。海洋学を学んだ大学時代はゲームやアルバイトに明け暮れたが、3年春に太平洋の島々を巡った研修航海で「自己決定」の重要性に気づかされた。航海への参加も初めて自分の意思で決めたといい、「それまでは親や周囲に流されて生きてきた。自ら何かを選ぶことで、強い責任感が生まれると実感した」と振り返る。

 卒業後の07年に前身の会社に入社。機械加工や生産管理を7年間担当したが、前社長の指示に従うだけの社内の雰囲気に嫌気が差していた。14年に前社長から次期経営者に指名されると、2年後に株式を購入して社名や組織体制を一新した。

 従業員とのコミュニケーションを大切にするのは、従業員に自己決定を促すためだ。「まずは自分で考えて行動し、改善を繰り返してほしい。そうすれば、町工場として培った技術を受け継ぎながら新たな物を作り出せるはず」と言い切る。

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