「楽しいから参加しよう」増えれば祭りは続く 「伝統行事の継承」テーマに講演

葛城神社の祭礼について講演する鵜島教授(京丹波町高岡・若竹センター)

 京都府京丹波町口八田の葛城神社で100年以上続く秋の大祭を、地域の活性化にどう生かすか、関西外国語大の鵜島三壽教授が同町で講演した。曳山(ひきやま)や太鼓山が練る勇壮な祭礼の特徴や由来に触れながら、担い手の先細りが進む伝統行事の継承に大切なのは「文化を守りたい、将来に伝えたい、という住民の意志」だと呼びかけた。

 同祭は「八朔(はっさく)祭」として旧暦8月1日に営まれていたが、現在は人の集まりやすい10月の3連休に行われている。辻村、中畑、笹尾、中村、下村、鎌倉の計六つの地区から、それぞれ1基ずつ山が出る。子どもらが乗り子となり、太鼓や笛で祭り囃子(はやし)を奏でながら地域を練り歩く。

 祭りや曳山の成り立ちについて、隣接する兵庫県丹波篠山市とのゆかりを指摘。曳山、太鼓山の半数は明治、大正期に同市から購入したと伝わる。囃子曳山で奏でる「祇園囃子」が、同市の波々伯部(ほほかべ)神社の囃子に由来するとの伝承や、楽器の音色を口で表現する「口唱歌」が同市の曳山と共通している。葛城神社の関係者が囃子を習いに行ったとの記録もあり、「起源を探るには同市の曳山祭礼を調べる必要がある」と述べた。

 祭りの行事はその日、その時間、その場所でしか見ることができない。囃子などの芸能は地域の中で代々受け継がれる教育的側面があり、「祭りに参加する子どもたちを将来地域を背負う若者として育てる機能もあった」という。

 近年、少子高齢化により祭りの担い手が減少の一途をたどる。祭りの参加者には性別、年齢、居住地など、一定の条件が設けられていることが多いが、人数確保のため時代とともに緩和されつつある。「曳山行事は山を実際に引くなど、地域外の人でも参加しやすいのが利点」とし、日本文化を体験したい外国人留学生や観光客などのニーズに応えられる可能性を示唆した。

 伝統行事の継承では、地域の負担軽減や規模縮小など内向きの発想に陥りがちだとした上で「『文化財だから守らなくては』ではなく、『楽しいから参加しよう』という人が増えれば、祭りは続いていく」と訴えた。

 講演は葛城神社曳山保存委員会が主催する「『明日へ繫(つな)ぐ曳山巡行』を考えるシンポジウム」の一環。3月19日に開かれ、約30人が聞いた。

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