スプリントレースで躍動のKTM、ビンダー&ミラーの同士討ち。ペドロサに贈られた賛辞/第4戦スペインGP

 4月29日、MotoGP第4戦スペインGPのスプリントレースで、KTMライダーが躍動した。ブラッド・ビンダー(レッドブルKTMファクトリー・レーシング)が優勝し、ジャック・ミラー(レッドブルKTMファクトリー・レーシング)は3位を獲得。ダニ・ペドロサ(レッドブルKTMファクトリー・レーシング)は、ワイルドカード参戦ながら6位でゴールしたのだ。

 予兆のひとつは、予選だった。ミラーとペドロサがQ2にダイレクトで進出し、ビンダーもQ1を突破してQ2に進んだ。小雨が降ったQ2で、ミラーが2番グリッドでKTM移籍後初のフロントロウを獲得し、ビンダーは4番グリッド、ペドロサは6番グリッド。3人が2列目までに並んだ。

 ビンダーはQ1から挑んだ予選について「Q1を突破しなくちゃいけなかったけど、フリープラクティスではとてもいいフィーリングがあったし、しっかりしたペースもあった。だから、1周でもいい走りをすれば、Q1を突破できると思っていたんだ」と語っている。

 迎えたスプリントレースでは、2コーナーで発生した4人のライダーのクラッシュにより赤旗中断。再スタートとなったレースは、11周で行われた。1周目にビンダーがトップに立ち、3周目にミラーがビンダーをパスする。トップはミラー、2番手はビンダーで、ふたりのKTMライダーがワンツーでレースをけん引した。

 レースは終盤に向かうにつれてKTMの一騎打ちの様相が色濃くなっていき、残り2周の6コーナーでビンダーがミラーをオーバーテイク。ビンダーはトップでチェッカーを受けた。ミラーは最終ラップの6コーナーブレーキングでアウト側にはらみ、フランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)にかわされて2位を逃したものの、3位でゴール。KTMのふたりがトップ3に入った。

ふたりそろってスプリントレース後の会見に出席したビンダーとミラー

 スプリントレース後の会見で、優勝したビンダーはこう語った。

「2度目のスタートはすごくうまくいったよ。(赤旗中断で)ピットに戻ったあとだったので、序盤は少しタイヤを温めにくかった。最初の2周は少し不安定だったけど、6周を過ぎてからはよくなって、いいリズムで走れるようになった。チャンスがあったから、ジャックをパスしたんだ。彼は厳しく攻めてきた。コーナー進入で何度かステアリングロックにぶつかったけど、優勝を手にすることができてすごくうれしいよ」

「ジャックはコースの何カ所かでとても強く、僕は他のところで少しアドバンテージがあった。だから文字通り、ヨーヨーみたいなものだった。チャンスだと見ればものにしないといけなかった。最後まで持ちこたえられて素晴らしいよ」

 一方、あと少しで2位に届くところをミスによって3位で終えたミラーは「最初のスタートはうまくいって、トップに立つことができたんだけど赤旗が出て、2回目のスタートはうまくいかなかった」と言う。

「ブラッドは6コーナーのバックエンドゾーンでものすごく強かった。2回くらいはなんとか耐えたんだけどね。僕から見ても、とても印象的だったよ。彼は路面にひざをつけ、バイクがしっかりしていて、スーパーバイクに乗っているみたいで、見ていてとても格好よかったから」

「最終ラップはミスしないように、ということだけだったけど、実際にはミスをしてしまって、ペコ(フランセスコ・バニャイア)のためにドアを開けてしまった。でも、ホルヘ(・マルティン)からポジションを守れたのはラッキーだったね。週末を通してずっとバイクがよく走っていて、とても満足しているよ」

 質疑応答のなかで、ビンダーとミラーはともに、テストチームとテストライダーであるペドロサへの感謝を述べていた。ミラーは「スプリントレースで(ダニが)6位になったことを誇りに思う。つまり、僕たちにはグリッド上で最高のテストライダーがいると思うんだ」と語る。また、ビンダーもこのあとの質問の回答の中で「彼から学ぶことはたくさんある。ジャックが言っていたみたいに、ダニが最高のテストライダーであることに間違いはない」とコメントしていた。

 ビンダーとミラーから絶賛を受けるペドロサは、スプリントレースを6位でフィニッシュ。ピットに戻ってきたペドロサを、たくさんのKTMスタッフが拍手で迎えていた。そこにはワイルドカード参戦で6位という結果を称える意味とともに、ペドロサが行ってきたこれまでの貢献への感謝が含まれていたのではないか、と思う。

ペドロサはオリベイラと5番手争いを展開した

「スプリントレースはすごく、すごく走りがアグレッシブだね。ライダーはできるだけ早く、ポジションをたくさん上げていこうとするからさ」と、ペドロサはレース後の囲み取材で、まず初めて経験したスプリントレースの印象を語った。

「その後はペースをキープしようとした。前方では順位を争っていたけど、4~6台のバイクに続いて走っていると、バイクの挙動は僕が慣れているものとはかなり違っていた。ブレーキング・ポイントについてもアジャストしないといけなかった。だから、新しい環境に慣れようとしていたよ」

「そのあとにミゲール(・オリベイラ)をオーバーテイクしようとしてみたけど、難しかった。彼は力強く戦っていたから……。1、2回チャンスがあったけど、時間をロスしてしまって前のライダーと離れてしまい、さらにザルコが追いついてきていた。だから、あまりペースを乱さず、ポジションをキープして、最後にもう一度、挑戦してみようと思ったんだ。プラクティスよりもレースでのタイヤの変化はけっこう大きかった。それが今日学んだことだよ」

 バイクの挙動は現役時代と違うのか、と問われると、ペドロサは「ものすごく違う」と答えた。つまり、集団で走っているときと単独走行のとき、バイクの動きの違いが大きいということだった。

「キャリアの終盤では感じることはできていたけど……でもとにかく、ウイングやエアロダイナミクスは現在のようなものではなかった。(現役時代にも)スリップストリームやひとりで走っていたとき、わずかな違いは感じてはいたけど、ほとんど違いなんてなかった。(今は)ほかのバイクが自分のバイクに影響するんだから、とても重要なことだよ」

 バイクやタイヤの変化、違いを交えつつスプリントレースを振り返るペドロサの表情は、金曜日と同じように柔和だった。ビンダーが優勝してミラーが3位。自身としても6位フィニッシュ。テストライダーとしては喜ばしいKTM勢の活躍だったことだろう。

「全体的に、間違いなくチームとしてとてもいい結果だったと思うよ。だって、KTMの3台がトップ6に入ったんだからね。最高の結果のひとつじゃないかな」

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