「日本百名山」の若き深田久弥が日記につづったこととは 発見の6冊を福井県ふるさと文学館で展示 6月4日まで

新たに見つかった深田久弥の日記を紹介する展示=4月22日、福井県福井市の県ふるさと文学館

 旧制福井中で学び、後に「日本百名山」を著した作家で登山家の深田久弥(1903~71年)が、19~22歳の旧制一高時代につづった日記6冊が見つかり、福井県福井市の県ふるさと文学館で展示されている。山行の感動や創作の悩み、他の文学者との交流などが率直に記されている。6月4日まで。

 日記は縦約15センチ、横約10センチの手帳型で、同館が昨年12月に東京の古書店から購入した。1923年1月3日から25年11月2日に書かれており、若き日の深田の心情や当時の社会情勢を知る上で資料価値が高いという。

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 23年10月の日記には、埼玉、東京、山梨、長野の4都県にまたがる甲武信ケ岳(こぶしがたけ)(2475メートル)の山頂からの眺めを記述。「壯觀(そうかん)! 何と云(い)ふ壯觀だ。夕暮(ゆうぐれ)近くの清澄な大空の中に、思ひ思ひの姿で、山山が並びたってゐる」などと表現している。

 25年1月の日記には、坂井市出身の作家、中野重治が創刊した同人誌に加わったことについて、「果(はた)して所謂(いわゆる)『作品』が書けるかどうか」などと記し、文学の道に進むか決めきれない心情が読み取れる。

 このほか、関東大震災の様子や芥川龍之介に講演を依頼したエピソードなども書かれている。

 6月3日に深田の長男、森太郎さんによる文学講座が県立図書館で開かれる。

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