現物取引のみの投資家も見ておくべき【信用倍率】とは

株を現物取引のみで行っている方も多くいらっしゃると思います。現物取引のメリットは、長期で株を保有していても決済期限が無いので、購入後ずっと持っていられる事だと思います。例え買った株が値下がりしようとも、保有期限の制限がありませんので、気が楽なのだと思います。

しかし、いつまでも決済しないでいられることが良い場合もあれば、そうではないこともあるように思います。

どんな悪材料が出ようとも、そのまま株を保有し続ける事は賢明ではないと思います。「期限がないから損切りをしない」という方を時々お見かけしますが、やはり資金のマイナスを日々抱えながら過ごすことは、メンタル的にも辛いものがあると思います。


信用取引とは

現物取引のほか、証券会社に担保を預けて、証券会社から資金や株式を借りて売買する「信用取引」という取引もあります。信用取引は、新規建てした日から6ヵ月以内に必ず返済(※)をしなければなりません。買ったのであれば必ず売らなければなりません。信用取引は売りから入ることも可能ですので売ったのであれば買わなくては(買い戻し)なりません。
※一般信用取引の返済期限は、証券会社によって異なります。返済期限を設けていない証券会社もあります。

信用取引は6ヵ月間を越えて保有してしまうと、証券会社により強制決済されてしまいます。株を買ったものの、自分の買値を超えず売れなかった、買値は超えたもののもう少し上昇してから売りたいと思っていたら下落してしまい、結局利益を出して売却することが出来ずチャンスを逃してしまったなど、事情はさまざまですが期限に対する注意を怠らないようにしたいです。

信用取引のメリットは、証券会社に入金した現金や保有している株式を担保として扱い、約3.3倍の額まで取引が可能となることです。それにより、売買する銘柄や購入数を増やしたり、高額の銘柄も手がける事が可能となります。

また前途したように、現物取引は「買い」からしか取引できませんが、信用取引は「売り」からも取引することができます。株価が下落するであろうと判断した時には「売り」を行い、思惑どおり下落したのであれば、そこで買い戻しを行えば利益が出せます。

反面デメリットとしては、預けた資金の約3.3倍の額まで取引ができるため、大きな損失が発生する可能性があることです。購入していた株価が下がり損失が大きくなり、信用取引を行うために必要な委託保証金の割合を下回ってしまった場合(最低委託保証金維持率)は、追加の保証金(追証)を入金する必要があります。

※編注:初出時、見出しに誤りがありました。

投資家の動向がわかる信用倍率

信用取引の「買い残」「売り残」とは、信用取引の残高のことで、信用で買っている投資家の買いを「買い残」、売っている投資家の売りを「売り残」といいます。「買い残」と「売り残」を総称して『信用残高』といいます。また信用倍率とは、週に1度、東京証券取引所から発表される信用残高(信用買い残と信用売り残の比率)のことで、信用取引における買い方と売り方の状況を確認できます。信用倍率の計算方法は 「買い残 ÷ 売り残 = 信用倍率」と、買い残から売り残を割ることで求められます。

信用倍率から、市場が「信用買い」と「信用売り」のどちらに傾いているのかを読み取ることができます。

基準値は「1」で、1よりも数値が大きい場合は買い残が売り残よりも多く(買っている人の方が多い)、数値が1未満であれば、売り残が買い残よりも多い(空売りしている人の方が多い)ことを表しています。また、基準値である1を大きく上回っている場合、その銘柄は上昇方向に過熱感を持っていると解釈されます。

信用倍率が高い(買い残が多い = 買っている人が多い)ときは近い将来、株価が上昇すると予測している投資家が多いということになります。反対に、信用倍率が低い(売り残が多い = 空売りしている人が多い)ときは近い将来、株価が下落すると予測している投資家が多いことを意味します。

このように信用倍率を見ることで、多くの投資家の動向を知ることができます。ただし、信用倍率があまりに一方向に傾いた場合は、株価が反対に動く場合も多々あります。「目立った悪材料がないのに株価が下落している」などといった状況は、信用買いの決済(売り)が要因になっているかもしれません。

現物取引のみで行っている方も、日頃から信用倍率を見る癖をつけておいた方がよいと思います。気になっている銘柄や保有している銘柄の買い残・売り残が大幅に変化したら、どのような理由で増加や減少したのかを調べたり、推測してみることもおすすめです。

また、その都度気づいた事をノートなどに書きとめておくと、後々見返した時に役立ちます。その時は答えが分からなくても、未来に回答があるかもしれません。株の楽しさはこんなところにもあります。

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