水俣病に翻弄された患者、その苦悩を語る 京都で「近畿初」語り継ぐ講演会

水俣病患者としての体験を語る小笹さん(京都市中京区・立命館大朱雀キャンパス)

 水俣病の教訓を語り継ぐことを目的とした記念講演会が4月29日、京都市中京区の立命館大朱雀キャンパスで開かれた。患者や有識者らが登壇し、「公害の原点」とも呼ばれる歴史を振り返りながら、水俣病が現代社会に問いかける課題をそれぞれの立場から語った。

 水俣病の歴史を社会に継承する認定NPO法人「水俣フォーラム」(東京都)が主催。水俣病が公式確認されてから40年の節目である1996年以降、東京を中心にほぼ毎年講演を開催してきた。近畿での開催は初で、立命館大生存学研究所と共催した。

 オウム真理教を題材にした映画「A」を手がけた映像作家の森達也さんは「水俣病には近代日本が抱える問題が凝縮されている」と指摘。「個」の患者と「組織」である企業が対立した点に着目し、「人は恐怖や不安を感じた時、自衛のため群れをつくる。そして組織の一員になった瞬間、凶暴なことをしうるものだ」と訴え、「集団化の副作用」を自覚する重要性を強調した。

 水俣病患者の小笹恵さんは、中学生ごろからふらつき始めるなどの症状が出始め、自身や家族が徐々に水俣病にむしばまれた様子を振り返った。母が「自分が水俣病かどうか、どうしても知りたい」と泣きながら父に訴える姿を目にした際には、思春期で周囲には隠したいとの思いもあったため、複雑な心境だったと明かし、水俣病に翻弄(ほんろう)された苦悩を思い返した。

© 株式会社京都新聞社