<ランチ>蜷川幸雄さん、大物俳優ら訪れた“洋食フジイ” 10日間煮込むデミグラスソース人気、オススメは

日替わりランチ

 「洋食フジイ」は埼玉県川口市本町1丁目商店街にある。昭和レトロの風格の店構え。お昼時、奥の厨房(ちゅうぼう)で2代目店主の藤井幸雄さん(73)が黙々と仕事をする。日替わりランチ850円。この日はロースカツとハムエッグ。ライス、みそ汁、おしんこ。初代の父から受け継ぐデミグラスソースは、牛筋や野菜を10日間煮込む。透明感のある味が人気だ。

 本町1丁目は日光御成道の川口宿の本陣があった場所で、店の近くには明治時代の発電所跡のレンガ造りの建物や洋館など貴重な文化財が残る。その歴史を見つめなおそうと住民が最近、本町まちづくり協議会を立ち上げ、幸雄さんも参加している。

 二十数年前に89歳で他界した父福太郎さんがここで開業したのは1940年ごろ。前橋で生まれ中卒で川口駅前の「平民食堂」に就職。鋳物工場に借金して食堂を開店。当時は前に銀行や信用金庫が並ぶ目抜き通りで、鋳物工場の出前も多く従業員も4、5人いて繁盛したという。

 50年代のころ、いつも1人でふらりと来る男性客がいた。後に世界的な演出家になったが、まだ30歳代で俳優時代の蜷川幸雄さん。近くの公団住宅に住み、いつもカツライスを黙々と食べる姿が印象的だった。たまに俳優仲間と一緒の時もあり、そんな中に俳優萩原健一さんもいた。店の大切な思い出だ。

 【メモ】洋食フジイ 川口市本町1の2の10(電話048.223.3791)。営業時間は午前11時30分~午後2時、定休日は木曜日。

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