IEEE、日常生活におけるAIの用途10選を発表

AIは、最近になって驚くほどの進化を遂げているが、すでに私たちを取り巻く世界に多大な影響を及ぼしていることは見落とされがちである。

今年、人工知能の一般的利用において目を見張るほどの新展開があった。あるAIが生成した画像が、人間のアーティストと競い合って芸術賞を獲得。人工知能は私たちの周りに溢れているのが現実となったといえる。

がんのスクリーニング、絶滅危機にあるゾウの密猟対策、宇宙からの考古学的遺跡の発見など、様々に利用されている。しかし、AIの利用はこういった科学の最前線に限定されず、どこにでも存在する。

IEEEのシニアメンバーである漢広傑 氏(Guangjie Han)は、次のようにコメントした。

AI技術は、ほとんど気づかない間に、私たちの生活のほぼあらゆる面に浸透しました。日々利用する電子機器は、そこで発生するデータを分析することで、AIにより継続的に改善され進化しています。

AIの一般的な用途

  • 1. 音声アシスタント
    スマートフォンやスマートホームデバイスに搭載された音声アシスタントは、AIに支えられている。音声によるリクエストは、スマートフォンの中で処理されるだけでなく、時にはリクエストがクラウドに送られてサーバーで処理される。
  • 2. スマートホームデバイス
    人工知能により、スマートサーモスタットは家庭の空調システムを自動的に調整する。また、カメラは人、車、荷物の存在をユーザーに知らせることができる。
  • 3. eコマース
    AIは、オンラインショッピングの至る所で見受けられる。おすすめ商品の紹介は広く知られている用途であり、カスタマイズされたショッピング体験や、販売や返品の管理に役立つチャットボットなどもある。
  • 4. 小売業界のトレンドの把握
    オンラインストアは、買い物する際に単に推奨商品をお知らせしているだけではない。自社や他社ストアの売れ筋商品データを積極的に活用してトレンドを見定めている。AIを駆使して次に流行する商品を設計・製造すれば、人々がそれを望んだ時には、すでに準備を終えて店頭に並べることができる。
  • 5. コンテンツレコメンデーション
    AIを搭載したコンテンツレコメンデーションエンジンは、商品カタログや消費者データを使ってトレーニングすることで、よりパーソナライズされたレコメンデーションを提供するようになる。
  • 6. ナビゲーションと旅行
    カーナビでAIが生成するルート案内に従えば、移動時間や燃費を最適化することができる。
  • 7. 創薬
    薬の潜在リスクと薬剤作用のメカニズムを解明することによって、AIシステムは医薬品の新たな用途を発見する。この技術は、現在の医薬品や生物活性物質の再利用を可能にする、創薬プラットフォームを構築するのに役立っている。
  • 8. 顔認証によるスマートフォンのロック解除
    スマートフォンを見つめるだけでロックを解除できる。この機能は、カメラとセンサー技術を駆使して顔を正確に測定するAIが支えている。
  • 9. 金融詐欺の検出
    AIはパターン分析に秀でており、私たちのクレジットカード利用については高い精度で予測できる。そのためクレジットカード取引の不正を見極める作業に適している。
  • 10. オートコレクト
    AIシステムは、機械学習、ディープラーニング、および自然言語処理を使用して、ワードプロセッサ、テキストアプリ、その他のテキストメディアでの誤った言葉使いを見つけ出して、修正案を提示する。

IEEEフェローのカレン・パネッタ 氏(Karen Panetta)は、次のようにコメントした。

このようなシステムのトレーニングは、AIモデルをトレーニングするデータそのものに大きく依存しています。経験できるシナリオの件数が多ければ多いほど、より優れたシステムになりますが、そのためには厳選された注釈付きデータセットが必要です。これらのデータセットには、バイアスを減らすために多様性が求められます。また、現実世界の用途で発生する新たな条件やシナリオを反映するよう、柔軟に更新できることが重要です。
AIは説明可能でなければなりません。たとえば、多くのベンダーが人事考課と報酬を決定できる製品を販売しています。しかし、これらのシステムが下した決定について、AIがどのようにして結果を導き出したのか説明することはできません。AIは、そのようにして人の暮らしの糧にまで影響を与えるべきではありません。

AIがこれほど普及した現在でも、まだまだ成長し、改善する余地は大いにあるという。

▶︎IEEE

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