監督自身の父親が生前に愛した本を使用 「それでも私は生きていく」本編映像

2023年5月5日より劇場公開される、レア・セドゥ主演、ミア・ハンセン=ラブ監督の映画「それでも私は生きていく」から、本編シーンの一部を切り取った映像が公開された。

映像は、サンドラとその娘リンがある家を訪ねる様子を捉えたもの。症状の悪化した父ゲオルグのサポートが難しくなってきたサンドラたち家族は、父に施設に入ってもらうことを決断。哲学教師として誰よりも“言葉”を大事にしてきた父が持っていた膨大な本の一部を、かつての教え子が引き取ることになったのだ。段ボールいっぱいの本を本棚に片付ける手伝いをするサンドラとリン。「本人よりも本を見る方がパパを感じる」「選んだのはパパよ。選んだ本から人間性がみえる」とサンドラが語る中、ゲオルグが愛したたくさんの本の背表紙が映し出される。

このシーンに登場する本は、監督自身の父親が生前に愛した本の実物で、彼の死後にその一部を譲り受けた監督の強いこだわりにより映画に登場することになったのだという。監督は、「私自身、父の本に対して強い愛着を持っていたんです。だから、この映画を通じて父の本を残すことができて本当によかったと思っています」と語っている。

「それでも私は生きていく」は、父の病に対する悲しみと新しい恋の始まりに対する喜びという正反対の状況に直面するシングルマザーの、心の揺れを描き出した作品。パリの小さなアパートで8歳の娘リンとふたり暮らしをているシングルマザーのサンドラだったが、彼女の父ゲオルグは病を患い、徐々に視力と記憶を失いつつある。変わりゆく父の姿に直面し、無力感を覚えるサンドラ。ある日、旧友のクレマンと偶然再会し、自然と恋に落ちる。病を患う最愛の父に対するやるせない思いと、新しい恋の始まりに対するときめきという相反する感情を、サンドラは同時に抱く。

監督を務めるのは「未来よ こんにちは」などのミア・ハンセン=ラブ。監督自身の父親が病を患っていた中で脚本を書いた自伝的作品となっている。主演は、「007」シリーズなどで知られるレア・セドゥ。「人間味のある人物として捉えたかった」「彼女に新しい光を当ててみたかった」と監督が語る通り、主人公の複雑な心の機微を表現している。エリック・ロメール監督作品の常連俳優として知られるパスカル・グレゴリーが主人公の父ゲオルグ役を、主人公にとって希望の光のような存在として登場するクレマン役を「わたしはロランス」などのメルヴィル・プポーが務めている。

【作品情報】
それでも私は生きていく
2023年5月5日(金・祝)より 新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
配給:アンプラグド

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