チェスの強さに悲しい理由 ヒトラーの命令で監禁された公証人 「ナチスに仕掛けたチェスゲーム」公開決定

シュテファン・ツヴァイクの小説「チェスの話」の映画化作「ナチスに仕掛けたチェスゲーム」が、2023年7月21日より劇場公開されることが決まった。

ロッテルダム港を出発し、アメリカへと向かう豪華客船。かつてウィーンで公証人を務めていたヨーゼフは妻と船に乗り込む。ヨーゼフには、ヒトラーの率いるドイツがオーストリアを併合した時にナチスに連行され、彼が管理する貴族の莫大(ばくだい)な資産の預金番号を教えろと迫られたものの、拒絶したためにホテルに監禁されるという過去があった。船内では、チェスの大会が開かれ、世界王者が船の乗客全員と戦っていた。船のオーナーにアドバイスを与え、引き分けまで持ち込んだヨーゼフは、王者と一騎打ちをすることになる。ヨーゼフがチェスに強いのには悲しい理由があった。王者との白熱の試合の行方ともに、衝撃の真実が明かされる。

原作はオーストリアの作家であるシュテファン・ツヴァイクの「チェスの話」。1933年にヒトラーがドイツの首相に就任し、オーストリアにも反ユダヤ主義が広まったことから、ユダヤ人のツヴァイクは、1934年にイギリスへ亡命する。その後、1942年に本作を書いたのだが、完成した直後に自殺を選んだために、これが最後の小説となった。ツヴァイク自身と重なる本作の主人公が、極限状況の中、心身を病みながらも、何とか生き延びようとする姿が描かれている。

監督は、「ゲーテの恋~君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」~」のフィリップ・シュテルツェル。少年時代に原作と出会って深い感銘を受けたシュテルツェルは、変わるはずはないと信じられていた自由な世界が、驚くほど短い間に簡単にひっくり返されるという物語に、現代の社会状況との共通点を見いだし、警告の思いを込めて本作を作り上げたという。主人公のヨーゼフは、「帰ってきたヒトラー」でヒトラー役を演じ、「異端児ファスビンダー」「ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密」に出演したオリヴァー・マスッチ。

【作品情報】
ナチスに仕掛けたチェスゲーム
2023年7月21日(金)シネマート新宿他全国ロードショー
配給:キノフィルムズ
© 2021 WALKER+WORM FILM, DOR FILM, STUDIOCANAL FILM, ARD DEGETO, BAYERISCHER RUNDFUNK

© 合同会社シングルライン