若年末期がん患者「最期は自宅で」 神奈川県内自治体、在宅療養費など支援拡大

在宅療養する夫を支え続け、公的支援の必要性を訴えていた高木さん=川崎市高津区内

 回復の見込みがなくなった40歳未満の若年がん患者に対し、在宅療養を支援する動きが神奈川県内の自治体で広がっている。在宅療養に必要な訪問介護の利用や福祉用具の貸与などの費用を助成するというものだ。経済的な理由などで在宅療養を断念するケースもあり、「最期は自宅で過ごしたい」と願う患者をサポートしている。

 回復の見込みがない末期のがん患者は、患部の激しい痛みや衰弱などによって自立した生活が難しくなることがある。そうしたケースで入院から在宅療養に切り替える場合は、苦痛を和らげる緩和ケアだけでなく、生活介助も必要になる。

 40歳以上なら介護保険サービスを利用し、1割から3割の費用負担で食事や入浴、着替えなどを介助する訪問介護の利用や、車いすや介護ベッドなど福祉用具の貸与・購入が可能になる。しかし、40歳未満の若年世代には在宅療養に必要な支援が行き届いていないのが現状という。

 そうした中、若年世代も介護保険サービスに準じた支援を安価で利用できるように、各自治体が費用の助成を始めている。県内では2016年に横浜市が先行して実施。以降は鎌倉市、大和市が続き、本年度から川崎市と海老名市も始めた。川崎市は20歳~39歳、ほか4市は0歳~39歳が対象で、いずれも訪問介護や福祉用具の貸与・購入について、費用の9割(上限5万4千円)を助成している。県も、その一部を補助する。

 鎌倉市の担当者は「経済的な理由で断念することなく、在宅療養を望む多くの人が必要なサービスを受けられるように支援する必要がある」と意義を説明する。ただ、一部の自治体しか実施していないため、「地域によってサービスに差が生じるのは不公平になる」(川崎市)とし、国の助成制度創設を求める声も上がる。

 日本在宅医療連合学会理事を務める、つるかめ診療所(栃木県下野市)の鶴岡優子所長は「患者や家族の話を聞いた上で若年世代特有のニーズを把握することが重要。それを支援内容に反映させることで、ますます効果的になる」と指摘する。さらに「若年世代には病状の進行が早い患者もいる。医療と福祉の両面から地域でスピード感を持って対応してほしい」と話している。

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