<南風>フードペアリングの世界

 食業界の用語で「フードペアリング」という言葉がある。ペアリングというとワインを思い浮かべる人が多いだろう。魚料理には白ワイン、肉料理には赤ワインなどが基本的事例ではないだろうか。コツは、まず似ているものを合わせるというポイントがある。コク、うまみ、香り、味わいの特徴を合わせ、同調を生むという方法だ。

 そして、もう一つのコツは、対照的なものを合わせることで深みをプラスするという方法がある。例えばコショウを効かせたステーキであれば、同調するスパイシーなワインを合わせる方法と、逆に甘めのワインを合わせることで奥行きや複雑さを出す方法がある。

 また、ペアリングの世界には、土地を合わせるというポイントがある。気候や風土によって仕上がりが違うワインは、その地の食材を使用した地方料理との相性がいいという考え方だ。

 先日、イタリア料理店で、シェフが2種のワインを、イタリアの海側のワインと山側のワインだと分かりやすく説明してくれた。やはり魚料理には海側の辛口ワイン、地で育った野菜や肉料理には山側のフルーティーなワインが良く合った。もちろん、ここで紹介するフードペアリングの世界はワインだけではない。

 最近では、世界的な和食ブームで、日本酒のペアリングも注目されている。日本各地でも、その土地の郷土料理に合わせて、同じ産地の地酒が欠かせない。

 沖縄で言えば、沖縄料理に合わせて飲む泡盛だ。例えば、定番のゴーヤーチャンプルーは、同じ土地、日の光を受けたゴーヤーの苦さと、海水由来のにがりを使用した島豆腐の風味に、泡盛の芳醇(ほうじゅん)な香りが口中で重なることで、格別のマリアージュ(調和)を生む。普段からフードペアリングを意識することで、毎日の食事がますます面白くなりそうだ。

(下地友香、ちゅらグルメ編集長)

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