「大学生に『鋳物』読んでもらいたくて」江戸時代から続く技から生まれたビアグラス【しずおか産】

<伊豆川洋輔記者>

「これからビールが飲みたくなる季節です。仕事終わりや仲間と飲むビール。そんな一杯をちょっと贅沢にしてくれるのが、今回のしずおか産です」

今回のしずおか産は「静岡鋳物のビアグラス」。金属の中で、金、プラチナ、銀の次に高価といわれる「錫」で製造されています。錫ならではの輝きと重厚感がとても美しいのが特徴です。

手がけるのは、鋳物の技術で、約130年の歴史を持つ栗田産業です。普段は、100キロから6トンほどの大きさの工作機械や産業用ロボットの部品を製造しています。しかし、なぜ、ビアグラスを作ったのでしょうか。

<栗田産業 栗田圭副社長>

「いま、採用活動などで、大学生などと話しても『鋳物』という漢字を見ても読めないんですよね。まず知られていないというのをすごく痛感しまして、一般の生活の中で、少しでも残していけるものを展開していきたい」

江戸時代、現在の静岡市葵区の一帯は、徳川家康ご用達の鋳物師が活躍していたとされ、「鋳物師町」という地名が存在していました。近くに本社を構える栗田産業は、伝統を残し、日常生活で「鋳物」に触れてもらおうと6年前から、自社ブランド「重太郎」を立ち上げ、商品の販売を始めました。

<栗田産業 栗田圭副社長>

「こちらが重太郎ブランドで作っている、ラインナップになります。錫は光を反射させ輝く技術は苦労したんですけど」

『重太郎』の商品は、ほとんどが錫で作られています。錫は、色の変化が少なく、美しい光沢が長く保つとされていて、大切に長く使ってもらいたいという思いも込められています。

<栗田産業 栗田圭副社長>

Qこれはどういう作業ですか?

「原料となる錫を溶かしています。見た目もよろしいですし、乱反射して綺麗なものですから」

溶けた錫は、工業製品を作る際にも使用される粒が大きい砂で作られた型に流し込まれます。固まった錫は、厚さ1.7ミリのグラスに成形されます。その後、表面の膜を研磨すると、輝くビアグラスが完成です。

<栗田産業 栗田圭副社長>

「錫の溶けた色に近づいたと思う。一個一個手作りのため、それぞれが違う表情をしています。この中にビールやお酒を入れてもらい、中も乱反射しますので楽しんでもらえればと思います」

砂型でかたどられているため、ビアグラスの内側には凹凸が。この凹凸が美しい乱反射を生み出すのに加え、ビールのおいしさを引き立てるといいます。

実際に同じ金属製のグラスに、ビールを注ぎ、泡立ちを比べてみました。すると…錫のビアグラスは、時間がたっても泡が消えません。さらに、凸凹に炭酸が触れることで生まれるきめ細かな泡が、クリーミーな味わいを引き立てるといいます。

<栗田産業 栗田圭副社長>

「一つ一つ職人がこだわって手作りで作っている。お祝いや大事な人との時間に、おいしい飲み物と一緒に使っていただけると、作り手としてもやりがいがあると思います」

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