コンビニが最後の“防波堤”に ニセ電話詐欺対策 長崎県警とセブン-イレブン各店が研修

約20種類の電子マネーカードを熟知し、不審な購入を食い止めようと努める外国人スタッフ=長崎市五島町、セブン―イレブン長崎五島町店※写真は一部加工

 長崎県内で相次ぐニセ電話詐欺対策の一環で、県警は昨年秋から県内のセブン-イレブン各店とタッグを組んでいる。店員が詐欺と疑われる電子マネー購入を未然に防いだケースが3月末時点で20件に上り、コンビニが詐欺防止の「最後の防波堤」として成果を上げている。外国人スタッフも一丸で奮闘する長崎市内の店舗を追った。
 オフィス街の一角に立つ長崎五島町店。7人の外国人スタッフのうち、ネパール出身のクルミ・ラメシュさん(25)=鎮西学院大4年=は勤務歴約3年半。「5万円以上、電子マネーを購入する客には詐欺が多いと伝え、買う理由を聞く」と神経をとがらせる。
 ニセ電話詐欺-。母国ではなじみのない犯罪の実態を「最初は理解できなかった」というクルミさん。今では、よどみなくこう説明する。「おじいさんやおばあさんに悪い人から電話があり、電子(マネー)カードなどを買わせる犯罪」
 県警は昨年11月、市内のセブン-イレブン店長らを対象に研修会を実施。来店客が当選金名目で電子マネーを購入するのを店員が阻止する想定で声かけ訓練をした。
 島内祥行店長(42)は研修会に参加した直後、電子マネー購入を申し出た女性客への対応を今でも悔やむ。「税金の滞納を振り込まないといけない」。こう話す女性を粘り強く説得し、購入をあきらめてもらった。「今思えば、別店舗でだまされたかもしれない。警察に相談していれば」
 その後、同店はニセ電話詐欺の事例などを再確認し、外国人スタッフへの周知も工夫。オーナーの尾上佳樹さん(62)は「まず、日本語が得意な外国人スタッフと共有し、彼らから他の外国人スタッフに伝える。この繰り返しで全体の底上げにつなげている」と明かす。クルミさんも「怪しいと感じた購入者に詐欺の疑いを説明し、それでも購入する意思が強ければ、警察に必ず相談する」と店の指示を徹底している様子。
 県警生活安全企画課によると今年、3月末までに認知したニセ電話詐欺被害29件のうち、コンビニで電子マネーを購入した事案は20件。一方、店員が未然に防いだのも20件で、前年同期と比べ2倍以上増えた。同課は「引き続き、不審な電子マネーの購入を見かけた時は声かけをお願いしたい」と呼びかけている。

ニセ電話詐欺の県内被害状況

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