【市野瀬 龍一さん(有限会社豊谷殿 取締役)】『谷平』の名に想いを込めて届けたい

市野瀬 龍一さん(有限会社豊谷殿 取締役)

プロフィール
市野瀬 龍一(いちのせ りゅういち):新発田市出身。新発田市諏訪神社の境内に建つ結婚式場『豊谷殿』を営む両親の下で育ち、高校卒業後に料理の道へ進む。三条の料亭で6年間、東京・赤坂の料亭で3年間の修行を積み、新潟で父親の経営する食堂で店長となる。35歳の時に『豊谷殿』を継ぐと、2022年冬には新発田市諏訪町駅前店商店街に完全予約制の個室料理店『谷平』として移転リニューアルする。

ガタチラスタッフ:『新潟人148人目は、「有限会社豊谷殿」取締役の市野瀬龍一さんです!新発田市の諏訪神社境内で約60年愛されてきた日本料理店「豊谷殿」。このたび店名を改め、移転リニューアルをしました。長年続く老舗がリニューアルをしたきっかけとは!?これまでの歴史や今後の目標などをたくさんお聞きしました。素敵な笑顔で取材に応じてくださり、ありがとうございました!』

敷かれていたレールから自分のレールへ

–小さい頃から料理人を目指していたのですか?

市野瀬さん:目指していたというよりは、家業が結婚式場なので「跡を継いで料理を作っていくんだろうな」という漠然とした想いがずっとありました。三条で親戚が営んでいた料亭で6年ほど修行したのですが、その際の経験が今に繋がっていると感じます。

–どのような経験だったのですか?

市野瀬さん:全てが良い経験ですが、特に大きかったのは海外からのお客様と多く接する事ができた点ですね。有名な料亭だったので色々なお客様と接する事ができたのが「この道を続けていこう」と思えるきっかけになりました。

–その後は、東京に修行に行かれたんですよね?

市野瀬さん:はい、いわゆる「高級店」と言われる料亭でしたね。政財界の方も多くいらっしゃるお店でしたから、学ぶべき所が多かったです。長く働きたいと思っていたのですが、3年が経った頃に父親から「地元に食堂をオープンするから帰って来い」と言われて(笑)それで新潟に戻ってきました。

–東京にいたいという想いが強かったですか?

市野瀬さん:もともと山や海などの自然が好きで、東京はどちらかというと住むには合わないと感じていました。「新潟に戻るのも良いかな」と考えていた頃でもあったので、いいきっかけだったのかなと思います。

–戻られてからは食堂を任されたわけですね?

市野瀬さん:そうです。父親が始めた食堂で5年ほど店長として働きました。料亭とは料理が全然違いますから、最初は戸惑いましたね。内容や出し方、客層も全てです。しかし、両方の経験ができた事で、本当に自分が何をやりたいのかという事が見えてきました。

店内

時代の変化を見据えて

–市野瀬さんのやりたい事とは何だったのですか?

市野瀬さん:昔から自分が好きだった山、釣りに関わる料理を出したいと思ったんです。それで、山菜や魚を使った料理を出せるようなお店をいつか作りたいと考えるようになりました。結婚式のメニューで山菜料理をメインにしたものは出せないでしょう?(笑)

–確かに、そのイメージはないですね(笑)

市野瀬さん:とは言え、参列する人もお料理を食べに来ているわけではないのですが、あえて料理でも感動を与えられたら嬉しいなと思いました。そこはやっぱり、利益とは別の所にあるんですよね。結果的に、「お客様に喜んでもらいたい」ということを一番に考えて続けてきたのが良かったのかなと思います。

–それが57年間続いている秘訣なんですね!

市野瀬さん:結婚式場としての需要が減少した後も、宴会場としての需要がたくさん生まれるように当店も努力しました。結婚式や宴会の料理が決まりきっていて「つまらない」というイメージを払拭したかったんですよね。時代の変化に対応しつつ、魅力的な料理に特化したメニュー内容にして、提供の仕方まで大きく変えてきました。それがお客様にも受け入れられたのは嬉しかったですね。

–長い歴史の中で一番大変だったことは何ですか?

市野瀬さん:それはもう「新型ウイルス禍」以外にはないですね。けれど、それは飲食店どこも同じだと思います。それ以外の大変な事は、私の場合はありがたい事に親が築き上げてきた土台があった事で救われてきました。店舗などの形ある物はもちろん、親を含め、住み込みで働いている人達の背中を近くで見れたことが本当に大きい財産になっています。

店内

新型ウイルス禍だからこそ

–居酒屋の店舗は新型ウイルス禍にオープンされたのですね。

市野瀬さん:『豊谷殿』が新型ウイルスの影響で一気にお客様が減ってしまった事から、お客様がもっと気軽に利用できる居酒屋として、もともとやりたかった山菜や魚を出せるようなお店を出そうと思いました。業態の異なる店舗を経営していて良かったと思うのは、食材が有効に回る事です。

–食材が回るとはどういうことですか?

市野瀬さん:例えば、ぶり料理を出すとしますよね。結婚式場ではぶりを丸ごと一本買ったとしても、頭やカマなどのせっかく美味しい部位がメニューとして成り立ちません。居酒屋ではメニューとして魅力的な頭やカマが欲しくても、そもそもぶりを丸ごと一本買う事は難しいですよね。しかし、それがどちらもやっている事で、無駄なく美味しいメニューをそれぞれで提供できるようになったことは大きなメリットですね。

–真空パックの商品販売を始めたきっかけは何だったのですか?

市野瀬さん:ECサイトや店頭で販売している『特栽米コシヒカリ味噌漬け』などの真空パック商品は、もともと冠婚葬祭の引出物として開発しました。時間も人手も必要な通信販売で売ろうと思った事はなかったのですが、良くも悪くも新型ウイルス禍で人手がある時に通信販売をスタートしました。

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『特栽米コシヒカリ味噌漬け』

“谷平”に込められた思い

–2022年12月に「谷平」にリニューアルされましたが、こだわった点はどこですか?

市野瀬さん:大人数にも対応できる部屋の造りにした点です。気楽な雰囲気で過ごしてもらいたいので、そのための店の造りや雰囲気には特にこだわりましたね。「居酒屋以上、料亭未満」を目指しているので、色々なシーンで利用してもらえるお店にしていきたいです!

–「谷平」にはどんな意味があるのですか?

市野瀬さん:先代の「市野瀬 谷平」の名前から付けました。『豊谷殿』の名前をそのまま使い続けることもできましたし、実は従業員からはそういう声が多く挙がっていたんです。

看板

–反対意見があったなか、変えられた理由はなんですか?

市野瀬さん:『豊谷殿』は諏訪神社の境内という立地だからこその名前だという考えがあったんです。そのイメージもあるが故に、様々な事業展開をしていく上では使いにくいと感じました。そんな時に、先代の『谷平』の名が書かれた古い看板が出てきて、これだと思ったんですよね。そこで、母親や親戚に相談し「“谷平”の名前のように、今の谷の状況(ウイルス禍の現状)から、せめて平な状態(平穏な日々)に戻していくためにがんばっていこう」という想いを込めて名付けました。

–素敵なお話ですね!最後に今後の目標を教えてください!

市野瀬さん:まずは新しい『谷平』をより充実させて、3年後くらいまでに軌道に乗せる事が目標ですね!より良い空間でお客様に楽しんでいただく、まずはそこが一番です!次の目標はそれから考えます。リニューアルした『谷平』に、ぜひ気軽にお立ち寄りくださいね!

店舗外観

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谷平
住所:新発田市諏訪町1丁目3-25-2
電話:0254-22-6666
営業時間:11:00~22:00
定休日:月曜日(その他月2回)

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