社説:家庭内の事故 子ども目線で危険遠ざけて

 まさか、を避けるため細心の注意を払いたい。

 幼い子どもが犠牲となる事故が後を絶たない。

 名古屋市で3月、マンション7階から2歳の双子男児が転落死した痛ましい事故が記憶に新しい。転落防止用の手すりを乗り越えて落ちたとみられている。

 高層住宅だけでなく、窓を開けることの多い季節を迎えている。家の中も、おもちゃの誤飲や浴槽の事故など、さまざまな危険が潜んでいる。

 取り返しの付かない事故を防ぐため、二重三重の点検と対策を講じる必要がある。

 名古屋の事故では、両親は別室におり、双子のいた部屋に押しつぶされた段ボール箱が残されていた。自ら箱を踏み台にして窓際の棚によじ登り、窓から転落したとの見方が強い。

 窓には手すりのほか、開閉を防ぐストッパーを棚の側に取り付けていたが、反対側には未設置だった。両親は「過去に勝手に窓の鍵を開けることもあった」と説明しており、十分な防止策ではなかった。

 専門家は、2歳前後は急激に発達して「大人が思っている以上に身体能力も知能も高い」と指摘する。一方、体に対して頭の比重が大きいため、バランスを崩して転落しやすいという特徴に留意せねばならない。

 消費者庁の調査では、2015~20年に起きた14歳以下の転落事故30件のうち、2割近くが家具や段ボールを踏み台にしていた。窓やベランダの周辺にこうした足場となる物を置かないようにし、動かせる家具にも注意してほしい。

 保護者が目を離さないよう見守るにも限界があり、事故は一瞬の隙に起こる。

 子どもの目線から、危険になり得る環境をなくしていくことが重要だ。階段や家具類、水回り、熱器具などの対策も同様である。子どもの手の届かない配置と整理整頓に加え、補助錠や異常を知らせるセンサーなどの機器活用も有効だろう。

 好奇心おう盛な子どもにとって、身近な物品の誤飲も見過ごせないリスクだ。おもちゃや硬貨、化粧品のほか、大人のまねをして医薬品、たばこを口に入れてしまう事故が頻発している。ボタン電池の場合、機器から取り外しての誤飲が多く、密閉対策が不可欠だ。

 近年、強力な小型磁石や、風呂につけると急膨張するスポンジの玩具の事故も問題となっている。電池と同じく内臓の損傷や窒息の危険が高い。

 事故防止に取り組む京都市の「京あんしんこども館」や消費者庁、地元消防のサイトも参考にし、普段から注意点や応急対応、医療機関の情報を確認しておきたい。

 身の回りの安全面への配慮を十分にした上で、子どもの年齢に応じて危ない場所や行為を丁寧に話し、ルールや約束事にするのがいいだろう。

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