足利高創立式典でOBが講演 映画監督の谷津さん 中村医師「正しく勇敢」

講演する足利高OBの谷津さん

 【足利】足利高の創立114周年記念式典が2日、同校で行われ、OBの映画監督谷津賢二(やつけんじ)さんが講演した。アフガニスタンの復興に生涯をかけ、殺害された中村哲(なかむらてつ)医師の映画を撮影した経験を基に、「中村さんが遺(のこ)したもの」について熱く語った。

 1980年卒の谷津さんは94年、日本電波ニュース社に入社。中村医師の活動を約20年間記録し、ドキュメンタリー映画「荒野に希望の灯をともす」を制作した。中村医師を撮影した映像は千時間に上る。

 中村医師と無償の医療行為を受けたアフガン人との触れ合いを目の当たりにし、「お互いを尊重する絆を感じた。カメラに映らないと感じ、自分の目でその光景を見ていた。カメラには映らないものの方が大切なものもある」と明かした。

 中村医師は急激な洪水が村に迫った際、自らショベルカーで用水路の一部を壊し、水を食い止めようとした。「危険だ」と止める村人に対し、「私はアフガニスタンのためなら死んでもいい。自分の村を守るために、やるべきことがあるのではないですか」と決然と告げたという。

 これらのエピソードを踏まえ、中村医師を「生涯をかけて他者を慈しみながら、正しく生きた人。正しく勇敢だから、アフガン人に信頼された」と説明した。

 同校は昨年4月、旧足利高と旧足利女子高が統合した。足利女子高の創立年と創立記念日の1909年5月3日を継承した。卒業生は5万1千人に上る。

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