《連載:いばらきコロナ禍の先》(4) 教訓刻み、企業 前へ デジタル、働き方…利点に

社屋入り口に設置された顔認証の体温測定器に顔を近づける東京フードの社員=つくば市上大島

「こちらからは以上となります。皆さんから伝えたいことはありますか」

大型連休の谷間となった2日、総合商社の関彰商事の水戸オフィス(水戸市笠原)の一室。つくば本社や在宅勤務者をつないだウェブ会議が行われ、進行役の社員が画面に映る社員に呼びかけた。

コロナ禍でウェブ会議は定着した。取締役会や各支店との打ち合わせ、新入社員の研修などで役立った。感染防止だけでなく、離れた職場間などを移動する時間が効率化できた。

同社は5類移行後も在宅勤務制度を続ける。広報部長の田中利明さんは「ウェブ会議や在宅勤務は、この3年間で社会に定着した。メリットがあるものは続ける」と説明する。

和食レストランチェーンの坂東太郎(古河市高野)も同様だ。「コロナ禍で得た効率化は引き継ぐ」と担当者。ウェブ会議は店長会議などを除いて続ける。

業務用チョコレート製造の東京フード(つくば市上大島)は、顔認証の体温測定器を使用。社屋入口で37.5度以上の熱がある従業員は中に入れず、自宅待機となった。

社内での感染リスクを抑える利点があることから、5類移行の8日以降も引き続き活用する。

コロナ禍では、新卒採用試験でオンライン選考を続けてきた。役員との最終面接を除いて今年も同様のスタイルで実施する。

以前に比べ、遠隔地の学生が増加。総務部長兼経理課長の船渡川智さんは「学生は日程を調整しやすく、交通費の負担が減るメリットがある」と話し、採用側も人材確保の範囲が広がったと歓迎する。

テレワークは、導入しやすい業種とそうでない業種がある。親和性の高い情報通信業で7割近く実施するのに対し、対面型のサービスが中心の宿泊業や飲食業では1割にも満たないことを経済産業省の調査結果が示している。

労務管理や人事評価上の懸念を指摘する声もある。日本生産性本部(東京)の調べでは、「仕事の成果が評価されるか不安」との回答が3割。ただ、同本部は育児や介護を抱える人など「多様な働き方のニーズに対応する選択肢の一つ」とみる。

5類移行後のマスク着用は、現時点で企業や職場によって対応に差がある。

東京フードは工場勤務者を除き、事務作業者の着用は任意として、マスクなしの会話も可能となる。

不動産業の香陵住販(水戸市南町)は接客を除き、事務作業者は「会話をしなければ」という条件で、社内でマスクを外すことを認める。

東京商工リサーチの全国調査によると、5類移行後のマスクは「事務所・外出先ともに個人の判断」と回答した企業が全体の43%を占めて最多。「事務所・外出先ともに着用」は20%だった。

感染対策など企業がどこまで平時回復できるか。関彰商事は「3年間の経験がある。今後の状況次第」。東京フードは「社会動向を見ながら判断していく」。

3年間で得た経験を教訓として刻み、企業は前へ進む。

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