テーラーメイドに回帰 マキロイのウェッジを巡る“歴史”

マキロイ(右)が最近のテーラーメイドとの取り組みを語った(Kevin C. Cox/GettyImages)

ロリー・マキロイ(北アイルランド)の用具変更は4月に開催された「マスターズ」まで毎週のようにヘッドラインを飾り、その内容はドライバーのヘッド、シャフトとその長さ、ロングアイアン、パター、果ては2022年末のウェッジ変更にまで及んだ。

入念な準備もむなしく予選落ちとなったマスターズ以来のPGAツアー出場となる「ウェルズファーゴ選手権」。彼は元の“さや”に収まっていた。

大会前の火曜日、マキロイは「何週間かオフを取り、自宅であれこれ調整し、新しい物に慣れることができたのは良かった」とGolfWRX.comに明かした。2週間の休みの間に新しいウェッジがなじみ、以前使っていたものに戻したパターにも新しいカスタムグリップを装着したという。

テーラーメイドのウェッジをバッグに入れた(GolfWRX)

この日、マキロイはバッグに数多くのテーラーメイド MG3 ロブウェッジを入れていた。各ウェッジは、それぞれソールのグラインドとバウンスに若干の差異があり、様々なコンディションに合わせたオプションとなっていた。2022年末にタイトリストのボーケイウェッジに乗り換えていたことを考慮すると、テーラーメイドのウェッジに回帰したのはちょっとした驚きだった。

しかし、テーラーメイドの専任チームと6、7カ月にわたって作業を行い、過去に使用したウェッジの異なる特性を合わせることで、理想とするヘッド形状、リーディングエッジ、そしてソールグラインドをあわせ持った新しいウェッジを作り上げることができたのである。

「テーラーメイドが僕のために何本かウェッジを組み上げてくれたんだ。過去に使ったウェッジの組み合わせみたいな感じで、ナイキのウェッジのデザインや、ボーケイのウェッジのデザインの要素を少しずつ盛り込んでいて、僕が気に入っていた部分をひとつのコンポーネントに落とし込んで、両方のウェッジのブレンドみたいなものを完成させたんだ。(テーラーメイドは)とても良い仕事をしてくれたと思う」

マキロイは優れた見識の持ち主であり、契約するテーラーメイドのクラブ職人と緊密に作業することで、彼にとって完璧なウェッジを作り出すことができたのである。

マキロイが使用してきたウェッジ。左上から反時計回りにナイキ、ボーケイ、テーラーメイド(GolfWRX)

ここで、マキロイのウェッジに関する歴史を簡単に振り返ってみよう。

2013年にナイキゴルフと契約したマキロイは、タイガー・ウッズ、デビッド・デュバルをはじめとする同社契約の有名選手のクラブを手がけた名高いクラブデザイナー、マイク・テイラーの作ったウェッジを使い始めた。テイラーは、異なるプレーコンディションに対応してフェースをいろいろな角度にして使える多用途性の高いウェッジの作り手として知られている。

16年にナイキがクラブなどのハードウェア製造から撤退すると、17年にテーラーメイドと契約して同社のウェッジを使い始めた。

22年終盤には周囲を驚かせた新しいボーケイウェッジへの乗り換えで成功を収め、今年のマスターズまでこのウェッジを使い続けた。

そして今週、テーラーメイドとの数カ月に及んだプロジェクトの末に新しくカスタムされたMG3の54度と60度のウェッジを実戦投入する運びとなった。今回のウェッジは、マキロイが過去に使用したナイキ、タイトリスト 、そしてテーラーメイドのウェッジからもインスピレーションを受けたものとなっている。

「今週僕が使うことになるであろうこの(LB-08)ソールは、僕がキャリアを通じて何度も使ってきたソールなんだ。デュアルソールのMグラインドみたいな感じで、ナイキのウェッジもこのソールだった。テーラーメイドを使うようになって以降も慣れ親しんだソールでもある。マイク・テイラーのグラインドは、全コンディションに適していると思う。全英オープンで使った数週間後にオークヒルみたいな軟らかいコンディションになる場所へ行っても大丈夫、というような感じだね。これはとても多用途性のあるグラインドで、他のソールはよりタイトな芝に特化していたり、あるいはワイドなバミューダに適していたり、得意分野があるんだ。オプションがあるのは良いことだね」

22年に行ったボーケイへの変更は、今回テーラーメイドが新しいカスタムウェッジを作ることに影響を与えているのだろうか。「そういう理由でやっていたわけではないんだ。ただ、僕があれを気に入っていただけの話で、(テーラーメイドのウェッジの)パフォーマンスが悪かったとか、そういうことではないんだよ。でも、契約しているクラブメーカーがそれを目にすると、その選手に対してベストを尽くそうとするよね。僕らは一緒に知恵を絞ったんだ。そして、いい感じのものができ上がったと思う」

マキロイが回帰したパター「テーラーメイド スパイダー ハイドロブラスト マレット」(GolfWRX)

パターに関して言うと、マキロイは「信頼できる古い相棒」と呼ぶクラブに回帰した。

テーラーメイド スパイダー ハイドロブラスト マレットパターがそれであり、ことしの「WGCデルテクノロジーズマッチプレー」と「マスターズ」でカスタムのスコッティキャメロン ブレードパターに変更するまで、数年にわたりこのモデルを使用していた。

ネーム入りのグリップ(GolfWRX)

見慣れたテーラーメイド製マレット型パターだが、真新しい赤いスーパーストローク ゼナジーピストルツアー“RORS”グリップが装着されている。

2週間のオフを経た今週、マキロイは直近に行ったクラブ調整の成果を実戦の場で試している。

(協力/ GolfWRX, PGATOUR.com)

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