旧岡藩主18代当主・故中川久定さんの遺志継ぎ基金設立 学生や研究者を支援【大分県】

2010年に竹田市で講義をした中川久定さん。遺志を継ぐ記念基金が設立された

 【竹田】旧岡藩主中川家の18代当主で元京都国立博物館長、故中川久定(ひさやす)さん(享年86)の遺志を継ぐ記念基金が設立された。竹田市に関わりがある高校生、大学生を対象にした奨学生制度、優れた研究に対する表彰、学術書の出版費用助成という3本柱で、優秀な人材の育成を後押しする。

 中川さんは東京都生まれ。フランス文学の研究者で名古屋大や京都大の教壇に立ち、1997年から4年間、同博物館長を務めた。中川家の墓地や古文書千点以上を市に寄贈・寄託し、岡藩史の研究に貢献。2001年には名誉市民に選ばれた。17年に亡くなった。

 基金は竹田を愛し、熱意を持って学問に打ち込んだ中川さんの志を受け継ぎ、「向学の意欲に燃える若者や人文学分野の日本研究者を支援したい」と妻洋子さん(京都府)が発案。中川家の財産を基に4月に設立し、洋子さんが代表理事に就いた。

 奨学生制度は市内の高校に通う生徒や、卒業して人文学分野を学ぶ大学生、日本文化研究を専攻する大学院生が対象。来年度から、月額で▽高校生 3万円▽大学生 5万円▽大学院生 7万円―を給付する。

 中川久定記念由学館賞は近世日本の地域文化研究に貢献した研究者やグループを顕彰(賞金50万円)。出版費用は、17~19世紀の日本を対象とする学術書について毎年度1件を助成(150万円まで)する。

 同基金事務局を務める佐伯治さん(64)=同市会々=は「岡藩が治めた地域からは多くの偉人、賢人が出た。基金により、日本を代表するような人物が育つことを期待する」と話した。

 同賞や出版費用助成の初回の申し込みは、いずれも7月31日まで。申し込み方法などは同基金のホームページで。問い合わせは事務局(0974.63.3879)。

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