一升瓶が足りない!青森県内酒蔵、酒があっても出荷できず 県外の主力工場閉鎖で

県内の酒蔵で一升瓶が不足している。三浦酒造の三浦専務は「他社でも古くてもいいので持ってきてほしい」と話す=9日、弘前市

 青森県内の酒造会社で一升瓶が不足している。関係者によると、瓶を生産してきた県外の主力工場が閉鎖したのが理由で、多くの酒蔵で酒はあっても出荷できない状態が続いている。「コロナ明け」の需要増が期待される中、各酒蔵は対応に苦しんでいる。

 「一升瓶が不足しております」。「豊盃(ほうはい)」の名で知られる弘前市の三浦酒造は3月、交流サイト(SNS)で窮状を訴えた。

 昨年末ごろから新しい一升瓶が入ってこなくなった。同社によると、新型コロナウイルス禍により日本酒の需要が減ったため、県外の一升瓶工場が生産を中止したという。

 三浦酒造はこれまで、生産する9割近くの酒を新しい瓶に詰めて出荷していた。しかし瓶不足により、年間8万~10万本あった一升瓶での出荷を、一気に3万本程度に減産した。四合瓶で売り上げをカバーしようにも急に瓶の数を確保できないため、全体の売り上げは1割減った。

 三浦文仁(ふみのり)専務は「一升瓶をやめるしかないのか。この状態は最低でも2~3年は続くだろう」と嘆く。

 瓶のリサイクルに期待したいところだが、市のごみ回収はガラスくずを集めるための回収のため、酒造店で使うことができない。同社は不要になった一升瓶を回収するコーナーを会社の売店前に設け、客に協力を要請している。

 「田酒」を製造する西田酒造店(青森市)の西田司社長は「全国で同じ問題が起こっている」と語る。同社は昨年秋ごろから、茶色の一升瓶の入荷が3割ほど減った。新たに入ってくる見通しは立っておらず、値段の高い黒い瓶に詰めることも考えている。西田社長は「瓶が入って来ないというのは、30年間この業界でやってきて初めて」とも打ち明けた。

 「八鶴」が主力銘柄の八戸酒類八鶴工場(八戸市)は以前からリサイクル瓶を中心に使ってきたため、今のところ大きな影響はないという。しかし瓶の卸業者からは、新しい瓶の納品には半年ほどかかると言われている。同工場の田端誠工場長代理は「対岸の火事では決してない。対策を考えなくては」と語った。

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