キッチンカーって儲かる?、福井で「爆増中」 初期費用や必要な資格…意外と低い開業のハードル

ふくい桜まつりの期間中、足羽川河川敷に並んだキッチンカー=3月、福井県福井市つくも1丁目
アメリカのスクールバスを改造したキッチンカーでホットドッグを販売している奥田さん=福井県福井市大手3丁目
中古のマイクロバスを購入しDIYでキッチンカーに仕上げている佐々木さん=福井県福井市西開発4丁目

 クレープに唐揚げ、カレーライス…。食欲をそそる香りとカラフルな車体で道行く人を誘惑するキッチンカー。飲食店の業態の一つとして浸透し、福井県内でも台数やメニューが“爆増中”。現在100台以上が各地で出店しているようだ。飲食店を開業するより初期費用は抑えられるなど、出す側のハードルも比較的低め。食べたい人も売りたい人も、注目です。

高まるキッチンカーのニーズ

 福井市で4月上旬まで開かれた「ふくい桜まつり」。期間中、足羽川河川敷には約20台のキッチンカーが並んだ。平日でも多くの家族連れやグループが車の前に行列をつくり、花見を楽しみながら熱々のフードをほおばっていた。

 「今は出店依頼の電話が毎日ある」とうれしい悲鳴を上げるのは、県キッチンカー協会の会長を務める佐々木周我(たいが)さん(29)。2020年7月の協会立ち上げ当初に加盟したのは10社程度。キッチンカーそのものの認知度も低かったため、「場所やイベントを探して、こちらから出店させてほしいと頼んでいた」と振り返る。その後、新型コロナウイルスによる飲食店の営業自粛なども影響し、販売機会を増やそうとキッチンカーを始める店が増加。現在加盟は60社を超え、未加盟を含めると県内では100台以上が出店しているとみられている。

 最近は「町内会のイベントへの出店依頼が増えた」と佐々木さん。コロナ禍前は、町内会でテントを張って飲食物を用意していたケースが多かったが「高齢化で難しくなったり、衛生意識が高まったりしたことで(キッチンカーの)ニーズが増えた」と話す。

増えるキッチンカーのメニュー

 メニューも多彩で、定番のクレープやたこ焼き、唐揚げに加え、ベトナム風サンドイッチの「バインミー」やジビエ料理、スモークベーコンなどの燻製(くんせい)を扱うキッチンカーも。季節や催しに合わせて商品を変える店も少なくない。

 アメリカンな雰囲気漂う黄色いスクールバスで、ホットドッグをメインに販売する「FOOD TRUCK USA EAT ME」は、人気のキッチンカーの一つ。コロナ禍まっただ中だった20年5月のオープン当初は、思うように営業できず「苦しい思いもした」と店主の奥田貴章さん(41)。催しの復活で出店機会が増え「リピーターのお客さんも来てくれてうれしい。外で食べる楽しみを提供したい」と話す。

 一方、出店者が増えた今は「差別化が必要」と奥田さん。おいしいのは大前提で、接客に力を入れるなど付加価値の提供を心がけているそうだ。

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開業に必要な資格

 キッチンカーが増えた要因として「出店するハードルが比較的高くないのも一つ」と佐々木さん。営業に必要なのは、講習会に参加することで得られる食品衛生責任者の資格と、販売したい地域の保健所に届け出る食品営業許可の二つ。あとは、衛生的な環境を維持できる基準を満たした車両、必要に応じて仕込み場所があればOKだ。

出回る中古車両、DIYの強者も

 車両の種類も多く、軽バンやトラックをベースにしたものや、けん引するトレーラータイプなどさまざまだ。一方、コロナが落ち着き店舗販売を軸に戻す事業者も。これによりオークションなどで中古車両が売買されていて、軽トラックベースなら50万円以下で出品されている車もある。

 オリジナリティーを出すため、塗装を含めDIYで製作する人も。佐々木さんも挑戦中で、中古のマイクロバスからシートを取り外し、冷凍庫やシンクなどを取り付けている。

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 佐々木さんは「工夫次第で、100万円程度の費用でも開業が可能」とアドバイス。近年は経済対策などの一環で、キッチンカー購入費などの一部を支援する補助制度を用意している県内市町もある。県協会では出店に向けた相談にも対応している。

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