「5月…お客様に戻ってきてもらいたい、の一心」 GW観光客戻った伊豆の旅館の悩み【現場から、】

本格的な復活を目指す静岡県内の観光業者。ゴールデンウィークで行楽客のにぎわいが戻り、伊豆の宿泊施設は活気を取り戻しつつあります。しかし、観光業者は、いわば「コロナの後遺症」ともいえる現状に頭を悩ませています。

伊豆の国市古奈にある温泉旅館「おおとり荘」です。

<新作料理について話し合う調理スタッフ>

「これが例のカニ。身が入っているかどうか確認しましょう」「大丈夫ですね」

「いけるじゃん。イセエビに代わるヤツでいけるかも分からないね。しっかりしているよ」

厨房では、このGWからどんな品ぞろえでお客を迎えるか、料理人たちが新作について話し合っていました。

GW後半、伊豆の国市の伊豆長岡エリアに多くの観光客が押し寄せました。おおとり荘には久しぶりに多くの予約が入って、常連客の姿も戻りました。

<常連客>

Q.自由な旅ができるGWいかがですか?

「今までのストレスが発散できて大変うれしく思っています」

<原勝政支配人>

「お客さんにご迷惑をかけないように、喜んでいただけるように努力するという意味で、気合の入り方が違いますね」

おおとり荘はこの連休に向け、約1億円投資して受け入れ態勢を整えてきました。

<原勝政支配人>

「こちらが改装したレストランです。個室にしたりだとか全体的に変えましたが、一番お金がかかっているのが空調と外の空気と中の空気を入れ替える換気」

2022年9月と23年1月にそれぞれ1か月間閉館し、コロナ対策を追加。約5000万円かけて、館内の空気を外気と常に入れ替える換気・空調を導入しました。旅行の形態はコロナ禍を経て、家族連れや夫婦などでゆったり過ごすスタイルが定着。おおとり荘では2つの部屋を1つに改装したスイートルームも新たにオープンしました。大浴場もゆったり過ごせる空間づくりにこだわりました。

<原勝政支配人>

「昔みたいな宴会とか大人数の旅行はこれから出てくるかも分かりませんが、波がある世の中だと思いますので、個人とかご家族とか小グループをターゲットにした旅館にしています」

夕方、チェックインの時間です。フロントが慌ただしくなりました。

<大阪からの宿泊客>

「(娘にとって)生まれて初めてだもんね、マスクのない生活。最初の緊急事態宣言の時に生まれたので。5月生まれ。コロナと同じ年」

<フロントスタッフ 渡辺莉嘉さん>

「本当に久々で、やっと本当に皆さんが動き始めたんだなという気持ちでいっぱい」

Q.腕が鳴る?

「そうですね。張り切っていこうと思います」

ゴールデンウィークの後半、満館となったおおとり荘ですが、実は前半は期待ほど予約が入りませんでした。連休の後の見通しも楽観視ができません。

<原勝政支配人>

「おおとり荘は7割が静岡県のお客様が来ていただいてる。今までは近場に来てた方が、みんな遠出してるのかな」

おおとり荘の利用者の中心だった県内の客が減り、県外客がほとんどでした。コロナが明け旅行は「せっかくなら遠出」に変わってきているのなら、県外の客を呼び込むことにも力を入れなければなりません。そしてもう一つ、悩みがあります。

<原勝政支配人>

「やっぱり旅行支援の分かりにくさ」

この4月から「全国旅行支援」は宿泊施設が申し込みを直接受けられなくなり、予約が激減。5月以降も尾を引いています。連休後の客足を落ち込ませず、夏までいかにつなぐか、今が正念場。おおとり荘では客を呼び込むため3000円割り引く旅館の独自策を打ちました。

<原勝政支配人>

「GW中にはダイレクトメールを発送してまして、独自の割引制度、また特権つきというようなものをリピーターの方から始めようと。本当に5月、戻ってきてもらいたいなっていう一心でやってます」

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