決算発表の翌日に爆上げ!投資家が反応した3つの銘柄の共通点とは?

ゴールデンウィーク前後は毎年、決算発表が集中するため、休みボケなどとは言ってられません。とくにこの時期は、3月決算企業が本決算を発表するため、投資家からの注目度がもっとも高く、寝る間を惜しんで決算チェックをしている強者もいることでしょう。わたし自身は、すべての決算内容に目を通すほどのマニアとは言えず、決算発表後に株価の反応がよかったものだけを、どれどれとチェックする、後出し投資法を実践しています。

決算発表後の株価の動きは、よくても下げたり、悪くても上げたりチグハグな動きをすることが多々あり、一筋縄ではいきません。好決算を期待した先回り買いで、被曝したこともしばしば。そういった悲劇を避けるため、決算後の株価の反応を見てから参戦するのが良策です。

今回も、決算発表の翌日に暴騰した銘柄を物色していたところ、いつもとは少し違った傾向に気づきました。


決算発表翌日に爆上げした3つの銘柄

まずは決算発表翌日にストップ高となった、遠藤照明(6932)を見てみましょう。

2023年4月28日(金)に発表された2023年3月期決算は、①売上高45,731(百万円)、②前年同期比+12.5%、③営業利益3,092(百万円)、④前年同期比△19.2%と増収減益で着地しています。

画像:遠藤照明「2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」より引用

新年度である2024年3月期予想は、①売上高48,500(百万円)、②前年同期比+6.1%、③営業利益4,800(百万円)、④前年同期比+55.2%と大幅増益予想。減益着地からの大幅ジャンプアップ増益は、投資家の大好物ですからストップ高も納得です。

画像:遠藤照明「2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」より引用

同社は商業施設用で国内首位級の照明メーカーで、LED照明を得意としています。2023年度は、円安や原材料の高騰で利益が削れましたが、値上げ効果と、電気代上昇による節電意識の高まりから業績が急激に回復しています。

次に同じくストップ高となった未来工業(7931)の決算です。

2023年4月27日(木)に発表された2023年3月期決算は、①売上高39,568(百万円)、②前年同期比+7.2%、③営業利益4,044(百万円)、④前年同期比0.00%と営業利益はトントンで終えています。

画像:未来工業「2023年3月期決算短信[日本基準](連結)」より引用

新年度である2024年3月期予想は、①売上高43,128(百万円)②前年同期比+9%、③営業利益5,644(百万円)、④前年同期比+39.6%と、こちらも大幅増益で、なんと10期ぶりの過去最高益更新予想となります。

画像:未来工業「2023年3月期決算短信[日本基準](連結)」より引用

住宅建設で使われる電材、管材がメイン事業で、堅調な新築住宅需要が追い風となっているようです。

そして最後は、決算発表翌日18%、その後4日間で34%株価が上昇したJVCケンウッド(6632)です。

2023年4月27日(木)に発表された2023年3月期決算は、①売上収益336,910(百万円)、②前年同期比+19.4%、③営業利益21,634(百万円)、④前年同期比+138.9%と、ほか2社とちがって大幅増益で着地しています。

画像:JVCケンウッド「2023年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」より引用

ただし同社は、IFRS(国際会計基準)を適用しているので、営業利益に固定資産の譲渡で発生した臨時の利益が100億円程度含まれており、その点は差し引いてみなくてはいけません。新年度である2024年3月期予想は、①売上収益350,000(百万円)、②前年同期比+3.9%、③営業利益13,400(百万円)、④前年同期比△38.1%。臨時利益で膨らんだ前期営業利益から見ると減益ですが、それを除くと実質は15%程度の増益になります。

画像:JVCケンウッド「2023年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」より引用

同社は日本ビクターとケンウッドが経営統合した会社で、お察しのとおりもともとは音楽機材が強みでしたが、現在の成長ドライバーは、トランシーバーを主とする無線システムです。世界的な危機管理機運の高まりで需要が堅調で、現在の売上比率35%から2025年度には65%まで引き上げる予定。

以上3社とも新年度予想が二桁増益の好決算ですが、そのほかにも共通点がありました。

株価を引き上げたのは「中期経営計画」

決算発表のタイミングで、3社とも中期経営計画を策定、公表しています。

中期経営計画は、今までも多くの企業が策定していますが、これほど中期経営計画で株価が反応したことはなかったように思います。とくに中期経営計画で意識されているのが、「企業価値の向上」です。分かるようで分からない曖昧な言葉ですが、噛み砕くと“稼ぐ力を上げていく”ということです。稼ぐ力は、営業利益率や、ROEといった数字に反映されますので、各社とも数値目標を掲げております。

遠藤照明は、連結売上高10%、連結営業利益率10%超えを目標としています。

画像:遠藤照明「中期経営計画の見直しに関するお知らせ」より引用

未来工業は、ROE8%以上、連結営業利益率12%以上を目標としています。

画像:未来工業「中期経営計画策定に関するお知らせ」より引用

JVCケンウッドは、ROE10%とPBR1.0倍超の早期実現を目標としています。

画像:JVCケンウッド『新中期経営計画「VISION2025」説明プレゼンテーション資料』より引用

なぜ中計に株価が反応するのか?

東京証券取引所は2023年に入り、頻繁に「企業価値の向上の実現に向けて、経営者の資本コストや株価に対する意識改革が必要」と提言しています。というのも、現在、プライム市場、スタンダード市場の3市場を合わせて約60%の企業が、ROE8%未満、PBR1 倍割れで、資本収益性や成長性といった観点で課題があると考えられています。欧米企業と比べると見劣りするため、海外投資家が日本株を買ってくれないという実情があり、なんとか改善したいと、ここにきてかなり東証が強気の態度を見せています。

3月31日(金)に開示された「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」という資料では、プライム市場、スタンダード市場に上場している全企業に向けて、現状分析し、計画策定・開示をし、取り組みの実行をできる限り速やかに行うよう要請しています。これにより、今までとくに株価を意識することなく、マイペースでぬるま湯に使っていた企業が、なんとなく居心地が悪くなり、次々と重い腰を上げ始めています。

画像:日本取引所グループ「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」より引用

上記3社も、東証からの要請を意識しての中計発表であることは疑いようがなく、それを投資家が評価したという流れです。

重要なのは継続と実現

もちろん中期経営計画を出したから終わり、というわけではありません。短期的に株価は跳ねましたが、絵に書いた餅だと分かると、投資家はすぐにそっぽを向くでしょう。取り組みを継続し、実現できるかどうか、今後の対応を注意深く追っていきたいと思います。

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