視野狭まっても見つけた光 大津でミニFМ立ち上げ テレビプロデューサーの挑戦

「ラジオの世界は新鮮」と話す佐藤さん。自らパーソナリティーも務める(大津市長等2丁目・ナカマチ放送局)

 「大津市民が一人でも多く活躍できる放送がしたい」。佐藤純生さん(62)は、商店街発のミニFM局を立ち上げ、地元の人たちに愛されるラジオ番組づくりに取り組んでいる。

 生まれも育ちも大津市。大学卒業後の1983年、びわ湖放送に入社した。当初から「県民が一人でも多く参加できるような番組をつくりたい」という思いを抱いていた。

 産婦人科医院の協力で、生まれたばかりの赤ちゃんを両親のコメントとともに紹介する番組「天使の笑顔」を制作した。「生まれて最初に、自分の番組でテレビに出てほしかった」。約6年で出演者は3千人を数えた。

 社会貢献がしたいと2011年に退社し、フリーのテレビプロデューサーを続ける傍ら、一般社団法人「あかるいまちづくりの会」を発足。施設の障害者と交流したり、子ども向けの交通安全教室を開いたりした。

 20年春。眼精疲労のような症状が長く続き、病院へ行くと、緑内障の診断を受けた。2回手術を受けたが、次第に視野が狭まる。「受け入れがたかった」。コロナ禍も相まって、人と会う機会は減っていった。

 そんな中、交流があった大津市のナカマチ商店街の北村浩之さん(64)から、商店街のミニFM局を手伝ってほしいと声を掛けられた。初めは困惑したものの、「放送に携わって地域貢献できるのは幸せなことだ」と引き受けた。

 今年4月、「ナカマチ放送局」が開局。環境問題について考える番組や、地域や商店街の人たちが出演する番組をつくった。今後は、子どもたちが主体となって制作する番組も企画している。視力は以前の10分の1以下に落ちたが、仲間に助けられながら奔走する日々。「大津の人に愛される放送局になっていけたら」

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