【感涙ライブレポ】ザ・ストリート・スライダーズ 22年ぶり再集結 武道館公演!  23年ぶりの武道館公演!スライダーズの “現在進行形”

デビュー40周年、武道館で再集結したストリート・スライダーズ

2000年10月29日、日本武道館公演でアンコールの「のら犬にさえなれない」をプレイし、「サンキュー!」というMCとともに活動に終止符を打ったザ・ストリート・スライダーズ。23年の時を経て再集結した彼らが、2023年5月3日、武道館のステージに立つ。デビュー40周年を記念したライブなので、これは行かないと!と思った筆者がチケット争奪戦に敗れたのは前回のコラムに記したとおり(参照:『人生のサウンドトラック《ザ・ストリート・スライダーズ》の魅力とは何なのか』)。ところが公演当日、開演の5時間前に急きょ参加できることになり、慌てて武道館へ向かった。本稿は、その記録として書かせていただきます。

開演の15分前に会場に入り、最初に驚いたのは客席がビッシリ埋め尽くされていたこと。普段は客を入れないステージ後方のスタンドもいっぱいだ。ステージは恐ろしくシンプルで、バックドロップもないから、前方のこちらからも後方スタンドがはっきり見える。武道館では何度もライブを体験したが、こんなにオーディエンスが詰まったライブは初めてだ。主催者発表によると立見席を含めて14,000人のオーディエンスが詰めかけたとのこと。その後、SNS上では武道館の動員記録を更新した…… という噂も流れたが、それも納得がいくほどだった。

オープニングは「チャンドラー」、スライダーズの現在進行が見えてくるステージ

開演時間が少し過ぎると客電が消え、地鳴りのように歓声が沸き上がる。ドラムの鈴木将雄(ZUZU)とベースの市川洋二(ジェームス)がステージ左手から姿を現わし、少し間をおいてギターの土屋公平(蘭丸)とボーカル&ギターの村越弘明(ハリー)が現われ、歓声はさらに高まる。

デビューから2000年の解散までの17年、メンバーチェンジすることなく、活動を続けてきた彼らが、23年前と同じ舞台に立っている。その光景だけで胸が熱くなってくる。「ハロー!」と第一声を発しながら、人差し指を立てて右腕を高々と上げるハリーのおなじみのポーズ。スライダーズが帰って来た!…… そう実感した最初の瞬間だ。

1曲目は何か? ファンなら誰もが感じるこの瞬間、オープニングの「チャンドラー」が鳴らされ、おーっ!と。2000年の解散公演でもプレイしていたことが思い出され、グッときた。アンサンブルは完璧で、この4人でなければ醸し出せない音がジワジワとシミこんでくる。個人的にもっとも心配していたのはハリーのボーカルはだったけれど、歌詞ははっきり聞き取れたし、「そいつはとびきりロックンロール」という最高音の歌詞もドライブ感たっぷりにキメた。杞憂。23年のブランクが、この1曲で埋まった。

「Angel Duster」「one day」「すれちがい」「Pace Maker」など、ブルースを引きずったナンバーが続く。元々、スライダーズにはタテノリのロックンロールは多くない。ヨコノリこそが彼らの醍醐味だ。23年前に比べると、タメを増してはいるが、それでもグルーヴは効いている。2023年のスライダーズの現在進行が、そこから見えてきた。

回顧ではない再集結。新曲「曇った空に光放ち」を披露

現在進行という点で触れておかなければならないのが、この日披露された新曲「曇った空に光放ち」だ。T-Rex を思わせるリズムギターに導かれたこのナンバーは、ローリング・ストーンズ「ギミー・シェルター」のようなグルーヴを発しながら、深く、そして確かに盛り上がっていく。新曲を作っていたことは嬉しい驚きだったが、この事実だけでも、今回の再結集が回顧ではなく、新しいスライダーズの始まりであることを物語っている。

蘭丸が歌う「天国列車」、ジェームスがボーカルをとる「Hello Old Friends」と、ファンには嬉しいナンバーが続き、「So Heavy」「Back To Back」と加速度がつき、「最後の曲です」というハリーのMCに対して起こったオーディエンスの「えー、もっと聴きたい!」という声をかき消すかのように蘭丸の強烈なギターリフが鳴り、「風の街に生まれ」の、風どころか嵐のようなサウンドを叩きつけて、本編は終了した。

イントロが鳴った瞬間に沸き起こる歓声、アンコールは「のら犬にさえなれない」

アンコールの声に応じてステージに現われたスライダーズがプレイしたのは、「のら犬にさえなれない」。そう、2000年の最後のステージのラストナンバーとなった曲だ。イントロが鳴った瞬間に沸き起こる歓声。そして聴いていて涙が出てきた。感傷? いや、違う。「最後のコインは何に使うのさ」「最後のダンスは誰と踊ろうか」という歌詞の “最後” の意味が、23年前とは違う意味をもって響いてきたからだ。自分を含む、この日会場に集った多くのファンもそうだし、スライダーズもそうだが、“最後” が確実に近づいている年齢だ。これにはハッとさせられた。

それでも湿っぽいのはゴメン…… とばかりに、スライダーズはロックンロールをかき鳴らす。ラストナンバー「TOKYO JUNK」は、この日プレイされた曲の中で、もっとも激しいロックンロール。「Get it on!」というシェイクに飛び乗った観客は一気に違う次元に導かれた。それが天国か地獄かはわからない。でも今それがわかる必要はない。ここに集った人々も、チケットが取れずにWOWOWの中継でライブに触れたファンも、この後も生きていくのだから。

秋にはツアーも!狂った夢を、追いかけ出したストリート・スライダーズ

終演後、ステージ上の四方に広がった白いカーテンが降ろされ、オーディエンスが一斉に歓声を上げる。そこには「ザ・ストリート・スライダーズ  秋・ツアーやるゼイ!」と記されていた。

自分もそうだが、この日のライブにふれたファンの本音は、もっと聴きたい曲があったし、2時間弱のステージでは短かった…… だろう。一方で、満ち足りた気分でもあったのも事実。武道館から外に出て、人の渦にまぎれで歩いていたら「新曲、よかったよなあ」という声があちらこちらから聞こえてきた。改めて言わせてもらうが、もはやスライダーズは回顧ではない。「TOKYO JUNK」の歌詞を借りれば、スライダーズは再び「狂った夢を、追いかけ」出したのだ。

Information

『On The Street Again -Tribute & Origin-』
スライダーズデビュー40周年。トリビュート&オリジナル音源2枚組

日本のロックシーンに衝撃を与えた、“20世紀日本音楽史上最強にして最後のロックンロールバンド”、ザ・ストリート・スライダーズのデビューから40年。2000年の解散以降も、そのカリスマ性は今も日本のロック界に大きな影響を与え続けている。彼ら、ザ・ストリート・スライダーズが響かせてきたロックンロールを、豪華アーティスト陣により現代に継承するべく独自に解釈し制作されたトリビュート音源と、その選曲された全楽曲に数曲を加えたオリジナル音源を、現代に語り継ぐべく、当時のオリジナルアナログマスターを使用、リマスタリングしコンパイルしたオリジン盤。スライダーズの魅力を紐解き、二つの角度から再確認する豪華2枚組でのリリース。

カタリベ: ソウママナブ

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