新型コロナ禍で激減したインバウンド(訪日客)が兵庫県姫路市に戻ってきた。世界文化遺産・国宝姫路城には4月の1カ月間で約6万人が訪れ、コロナ禍前の水準にほぼ回復。全入城者に占める割合は39.3%で、「平成の大修理」を終えた2015年3月以降で最高となった。訪日客の急増を受けて灘菊酒造(同市手柄1)では、日本酒文化の体験メニューを新たに設けるなど、受け入れ体制を整えた。(田中宏樹)
今月上旬、ゴールデンウイークでにぎわう姫路城三の丸広場には、白亜の大天守を背景に写真撮影する外国人の姿が多くあった。「コロナ前の風景が帰ってきた。やっとですね」。同城管理事務所の常峰匡之(まさゆき)さん(49)が頬を緩めた。
姫路城へは2019年度に約39万5千人の外国人が訪れ、全入城者の4人に1人を占めた。新型コロナの影響で20、21年度は7千人台に落ち込んだが、22年度は水際対策が緩和された秋以降に回復基調へ転じた。
サクラが開花した3月下旬には、城との競演を目当てに外国人客がさらに増加。3、4月の2カ月間で約10万人が足を運び、コロナ前の19年(約10万2千人)とほぼ同じ水準となった。それでもこの期間には中国の団体旅行制限が解かれていなかったため、中国人客は以前より少ないといい、常峰さんは「外国人客はもっと増えるだろう」と期待する。
灘菊酒造は4月、旅行会社からの要望もあり、酒蔵見学や試飲で日本酒の魅力を伝える外国人向けのメニューを打ち出した。同月中旬までほぼ毎日、欧州からの団体客を中心に予約があったという。
同月下旬には、フランスから訪れた約30人が酒造りの工程の説明を受け、法被姿で記念撮影などを楽しんだ。日本酒を購入したジュリアン・イズブレさん(40)は「都市部のビル群では味わえない、日本の本当の歴史や生活に触れられて満足だ」と笑顔を見せた。
灘菊で杜氏(とうじ)も兼ねる川石光佐社長(44)は「日本酒は欧米人にまだまだなじみが薄い。日本に来てこそできる体験を、日本酒に親しむ最初の一歩にしてほしい」と話した。