「あのとき 流れが変わったと言われるぐらいの大きなメッセージ発したい」サミット前に岸田総理 単独インタビュー 核兵器のない世界目指し

広島サミットを前に、岸田総理はRCCのインタビューに対して「核兵器のない世界を目指し、”あのとき流れが変わった” と言われるぐらいの大きなメッセージを発していきたい」と意気込みを語りました。

サミットでは、自ら提唱したヒロシマアクションプランに基づいて議論をリードしていく考えを示しました。

●岸田総理
被爆による壊滅的な被害、そして見事に復興を遂げ、いま世界に向けて平和の大切さを訴えている広島においてG7首脳が集うこと、この意味は大変大きいと思っています。いま国際的に力による一方的な現状変更が行われるなど不透明な状況にある中で、いま平和を語る、平和へのコミットメントを示すうえで広島ほどふさわしい場所はないと思っています。ぜひこの広島において、後退していると言われている核兵器のない世界を目指すという国際的な機運、これを再び盛り上げる反転させるきっかけを得たいと思っています。そのためにはまずG7において核兵器のない世界を目指すという思いを一致させたうえで世界に向けてそういった思いを訴え、具体的な実践的な取り組みを進めることを議論し進めていかなければならないと思っています。

昨年8月にヒロシマアクションプランという具体的な考え方を明らかにさせていただきました。核兵器不使用の歴史をこれからも続けるということ、核兵器の数を減らすということ、核兵器の透明性を高めて信頼の基盤とすること、そしてなによりもあらゆる取り組みの基盤として被爆の実相に触れてもらうことの大切さ、こういったことをヒロシマアクションプランにまとめましたが、このアクションプランについては既に4月のG7外相会合において評価するということでG7は一致をしております。ぜひ具体的なこういった取り組みを進めるきっかけにサミットをしたいと思っております。

Q.核兵器禁止条約の締約国からは、核兵器国や核の傘の下にある国への不信感が募っているようにみえる。総理が重視するNPT体制が揺らぐ懸念もあると思うが、信頼を取り戻すためにG7としてどのようなことができるのか。

●岸田総理
まず基本はまさに信頼を取り戻すためにNPT体制を維持し強化していかなければならないと思います。なぜならば実際に現実を動かす鍵を握っている核兵器国が参加している枠組み、これがNPT体制だからです。この体制を再び維持強化して信頼を取り戻していくことをしていかないと、多くの国々が共に協力していこうという機運につながっていかないと思っています。だからこそ昨年8月に私もヒロシマアクションプランを明らかにしてNPT体制の維持強化のために共に努力をしていく、こういった思いを訴えました。ぜひそういった思いをG7サミットでも共有し、そしてG7からまずはメッセージを発することによってG7以外の核兵器国にもこうした機運を広げていく努力をしていかなければならないと思います。

Q.当分、核抑止政策を維持する一方で、核兵器のない世界への機運を醸成する決意を伝えるのは大変難しい作業では

●岸田総理
そうです。厳しい現実に対して具体的に対応しなくてはいけないということで核抑止をはじめとするさまざまな議論が行われているわけですが、しかしその厳しい現実を前にしてその理想の部分、核兵器のない世界を目指すという理想の部分までいま機運が後退している。これは深刻に考えないといけない事態だと思います。現実が厳しければ厳しいほど改めて我々は理想について思い返して共に努力をしようという思いを再確認して、そうして努力をする、その道のりをいまからでも再び始めていかなければならない、こういった強い危機感を持っています。

厳しい現実にはそれぞれの国の国民の命と暮らしを守るためにどうするのか、ギリギリの検討が続いている、これが現実ではありますが、しかしあわせて理想についても語ることができなければ我々は未来について明るい見通しを立てることはできないのではないかと思います。厳しい現実があるからこそ理想への道のり、どのようなロードマップで理想に向けて我々は努力すべきなのか、これを語らなければならない、そういった一つのきっかけに今回のG7サミットはしていきたいと思います。そしてどのようにそのロードマップを作るかという一つの考え方としてヒロシマアクションプランを提示したつもりです。ぜひヒロシマアクションプランを一つの考え方のベースにしながら議論をリードしていきたいと思っています。

Q.核兵器不使用の継続は重要だが、なくさなくても使わなければいいのだと受け取られたり、核抑止政策の固定化につながったりする恐れはないか。

●岸田総理
ですからヒロシマアクションプランは5つのセットで申し上げております。核兵器の不使用それは一番目に挙げた、これはもう当然です、これから未来に向けて核兵器を使うなんてことはあってはならない。それとあわせて核兵器の数を減らさなければならない。そして具体的な道のりとして今までも国際社会で議論してきたCTBT(包括的核実験禁止条約)やFMCT(兵器用核分裂性物質生産禁止条約)、核実験ですとか核兵器に使用される物資の管理ですとか、こうした具体的な議論をこれまでもやってきた、しかし最近どうもその議論が進んでいない、再びそれを思い返そうじゃないかという核兵器を減らす努力、これは2番目に掲げていますし、そしてその取り組みの基本は国際社会の信頼関係だと。先ほど信頼が損なわれているというご指摘がありましたが、信頼のためには何が必要か、核兵器を持っている国の透明性、自らどういった実態にあるかこれを国際社会にしっかり明らかにする、透明性こそ信頼のベースである、これが3番目。4番目としては核不拡散、核の平和利用の問題、そして5つ目としてあらゆる取り組みのベースとして被爆の実相に触れること、これがあらゆる取り組みの基盤であるということ。世界の若い人たちにも被爆地に足を運んでもらおう、新しい基金を作ろうではないかとこういったことも申し上げました。こうしたヒロシマアクションプランに基づいて具体的な取り組みを進めていく、こうしたことについて一国でも多くの国に共感してもらい協力してもらい世界の機運を盛り上げていきたい、このように思っています。

Q.岸田家の親類縁者に多くの被爆者がいらっしゃる。そういったバックグランドを持つ政治指導者としてサミットに対して特別な思いは。

●岸田総理
そうですね。私も広島出身の政治家として幼いころから大人たちの話、特に私の場合、祖母の話が多かったですが、8月6日どんなことが起きたのか、悲惨な話は小さいころから私の胸に刻み込まれてきました。そういった思いが政治家になってからも核兵器のない世界を目指す取り組みにおいて、私自身を突き動かしていると思っています。ぜひそうした思いを大事にしながら、被爆地で初めて行われるG7サミットこれを機会に、もちろんサミットとしてさまざまな課題にしっかりと対応しなければいけませんが、核兵器のない世界を目指すライフワークについても長い目で見て”あのとき流れが変わった”と言われるぐらいの大きなメッセージを発していきたいと思っています。

(聞き手 RCC東京支社 大平洋)

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