大阪から丹波へIターン、盆栽店を営む夫妻の夢 先輩らと交流、いつの日か「メード・イン・丹波」を

盆栽店をオープンした宮里凜太郎さん、こずえさん夫妻=丹波市春日町下三井庄

 盆栽店「BONSAI LABO Tamba(盆栽ラボ丹波)」が、兵庫県丹波市春日町下三井庄地区にオープンした。大阪の都心で盆栽店を営んでいた宮里凜太郎さん(46)が、妻のこずえさん(36)と開業。販売や教室開催のほか、盆栽の素材となる木の生産にも取り組み始めた。地元で丹精する住民らとの交流も深め、「盆栽を通じて丹波地域の人をつないでいきたい」としている。(秋山亮太)

 宮里さん夫妻は昨年2月、丹波市に移住。購入した同地区の農地付き民家のうち、離れを住民らの手を借り店舗兼作業スペースに改装した。隣接する広大な農地ではマツやモミジ、サクラなどの盆栽を作る。2人は「ここに来て良いことしかない」と太鼓判を押す。

 凜太郎さんは大阪の専門学校で写真を学び、カメラを仕事にした。デジタルカメラの普及とともに、「撮り手の意志は必要とされず、撮ることだけを求められている」と感じるように。その頃、茶舖で一輪の白い花を付けたツバキの盆栽に出合った。

 「これが盆栽? と驚くほど、おしゃれでかっこよかった」と凜太郎さん。盆栽展で奥深さ、幅の広さに触れて「どうやったらこんなにすごいものが生み出せるんだ」と魅了され、30歳で大阪府池田市の盆栽園の門をたたいた。

 植物の生理機能を知ることから始め、親方の作業を手伝いながら技術を学んだ。毎日、誰よりも早く来て、最後まで仕事に取り組むという3年間を過ごし、独立。2012年、大阪市中央区にあるビルの3、4階に店と住まいを構えた。

 屋上で盆栽を作る珍しさもありファンは増えたが、周辺の府県や海外からの客、インターネットによる依頼が多く、凜太郎さんは「顔を付き合わせて仕事がしたい」と考えていた。何より、幼い娘を育てる環境を考えて、こずえさんと「人とのふれあいがある場所」に移ることを決めた。

 春日の拠点は、農地付きの条件に加え、緑豊かな山と水田のパノラマが広がるロケーションが気に入ったという。暮らしでも「子どもたちと遊んでくれたり、危なくないよう見守ってくれたり。地域の温かな支えがあって移住して本当に良かった」と、こずえさんは満面の笑みで語る。

 また、凜太郎さんは丹波地域には「長年盆栽を丹精する先輩がたくさんいらっしゃる」ことにも気付いた。先輩が手がけた「素晴らしい盆栽」が数多くある一方、持ち主が年を重ねて外との交流が減ったり、引き継いだ子が育てられなかったりし、人の目に触れなくなった「眠る盆栽」もあるという。

 今後、そんな盆栽を預かって整え、盆栽展として披露していこうと計画している。「丹波地域の人たちがつながって、暮らしに楽しさが加われば」と考える宮里さん夫妻の「地域への恩返し」だ。

 剪定(せんてい)技術を生かした庭木などの手入れも始めた。丹波地域の種や種木から育てたり、地元の焼き物を鉢にしたり、「メード・イン・丹波」の盆栽作りにも夢を抱く。「丹波に来て得られた心の豊かさが盆栽にも表れると思う」とこずえさん。凜太郎さんは「培ってきたもので少しでも地域に役立ちたい」とし、「ふれあいを大事に、この地ならではの盆栽作りに励んでいきたい」と話している。

 盆栽ラボ丹波TEL0795.71.4628

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