絶滅の危機から悩みの種に カワウ、ねぐらの木々は白くて美しいけど…フン害? アユ食べまくる「害鳥」扱いも

カワウのふんで白く染まった木々。多い時で約500羽がねぐらにしている=2月16日、兵庫県たつの市揖保町真砂

 2月、兵庫県南西部を流れる揖保川。枝葉を落とした河岸の木々が、白く染まっていた。冬の色彩の乏しさに、妙に際立つ。美しいと言い切れないのがもどかしい。

 枝に止まる無数の黒い影はカワウ。木を白くしているのはふん。ここをねぐらにする約500羽が、夜明けとともに流域へ飛び立つ。

 アユの遡上(そじょう)を迎える春、揖保川漁協(宍粟市)の理事森岡克己さん(67)は頭を抱える。内水面漁業関係者にとって、カワウは「害鳥」。あつれきは20年以上続く。「せきにたまってしまうアユをめがけてカワウの群れが来て、一気に食べられてしまう」

 カワウは1970年代、絶滅の危機にさらされた。環境汚染のため、コロニー(集団営巣地)は全国でわずか5カ所にまで減少。個体数は3千羽を下った。ただ、80年代に回復基調に入ると、生息域の拡大は早かった。

 要因は水質の改善だけではないという。NPO法人「バードリサーチ」(東京)でカワウを研究する高木憲太郎さん(45)が解説する。「護岸が整備され、木で覆われた川面や水中の草木が喪失して、魚は身を隠せなくなった。結果的に、カワウにとって魅力的な餌場が増えてしまったわけです」

 高木さんは、現在の全国の個体数を「10万羽以上」とみる。70年代より前の数は分かっていないが、「今より多かったと考えられる」。

 対策を進める関西広域連合による2022年の調査では、兵庫県内の個体数は約5千羽。「川の豊かさが衰えていることを考慮すると、今は少し多い状況」と高木さん。

 「被害を防ぐことが大事。アユの放流の仕方を工夫したり、採食場所での見回りを増やしたりすることが、カワウの個体数を人にとってちょうどいい数字に収束させていく。その努力を続けるしかない」(鈴木雅之)

■戦前まではふんを肥料に

鵜(う)のつく地名は全国に173カ所-。NPO法人「バードリサーチ」(東京)の元職員加藤ななえさんが「カワウのほん」で紹介している。ウミウも含まれているとみられるが、かつて人の営みに鵜が近しい存在だったことをうかがわせる。兵庫県にも養父市に「鵜縄」、淡路市に「南鵜崎」の地名が残る。 国内最大級の繁殖地となっている愛知県の「鵜の山」では、戦前まで肥料とするためにふんを採取。村に大きな収益をもたらし、小学校の校舎新築の財源になったと記録が残る。 同様にカワウのふんを収益とした地域は各地にあるが、いずれも化学肥料の普及とともに活用されなくなった。 人の生活を支える存在から、厄介者へ。カワウの立ち位置の変遷は、悲哀の歴史ともいえる。 ちなみに、日本の鵜飼いで活躍しているのはウミウという

© 株式会社神戸新聞社