深夜の住宅街に異変 火元に駆け込み男性担ぎ出し、初期消火も…近隣の6人に感謝状

感謝状を受け取った住民ら=10日、横浜市港南消防署

 「こげくさいにおいがする」。2月17日午後11時ごろ、横浜市港南区笹下2丁目の木造2階建て住宅で火災が発生し、近くに住むパートの名取あゆみさん(34)は異変に気付いた。多くの人が寝静まる時間帯、夫で会社役員の将輝さん(34)が探し回って発見した火元の住宅は、「すでに結構な勢いで、2階の屋根の軒から白い煙が漏れていた」

 煙は徐々に黒に変わる。あゆみさんが119番通報し、将輝さんは住民が取り残されていると知って2階に駆け込むと、住民の50代男性を発見した。「大丈夫ですか」と声をかけても反応がなく、駆け付けた近くに住む会社員の伊藤啓多さん(47)と会社員の齊木崇人さん(35)の3人がかりで倒れていた男性を運び出した。

 意識のない男性に対し、齊木さんの父で会社役員の真人さん(61)も加わって心肺蘇生を試みた。

 一方、住宅の1階には男性の両親がいた。80代になる父親は就寝中だった。真人さんがたたき起こし、「服なんか着なくていいから」と手を引いて避難させた。名取さん夫妻は隣接住宅の住民に避難を促し、伊藤さんの妻で会社員の睦美さん(45)は自宅から消火器を持ってきて、初期消火に取りかかった。

 横浜市港南消防署は今月10日、いずれも近隣に住む6人に感謝状を贈った。櫻井清二署長は、「勇気ある行動によって被害を最小限にとどめていただいた」とたたえ、名取将輝さんは、「協力してやれることはやった」と振り返ったが、一方で悔やむ点もあった。

 火元の住宅は2階部分をほぼ全焼し、2階から救助された50代男性は搬送先の病院で死亡が確認された。

 近くに町内会の消火器があったことを後に知った伊藤啓多さんは、「存在を知っていれば持ち出すことができた」、名取あゆみさんは、「火元を見つけてから通報では遅かった」と、6人はそれぞれ経験を教訓にしていた。

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