「兵庫県産山田錦」生産量24%増へ 酒米のトップブランド、酒蔵からの需要上向く コロナ禍からの回復顕著

実りの季節を迎え、こうべを垂れる酒米「山田錦」の稲穂=加東市内(資料写真)

 酒米のトップブランド「兵庫県産山田錦」の2023年の生産計画量が1万2900トンと、前年計画比で24%、2520トンの大幅増となったことが分かった。新型コロナウイルス禍で減少していた酒蔵からの受注回復を踏まえ、集荷・出荷する全国農業協同組合連合会兵庫県本部(JA全農兵庫、神戸市中央区)がまとめた。コロナ禍前の19年より依然2千トン以上少ないものの、6月に本格化する田植えを前に産地など関係者は活気づく。(三宅晃貴)

 全国で1200程度ある日本酒の蔵元の中で、有名銘柄を醸す多くの蔵を含む約500軒が県産山田錦を使う。精米しやすい上、発酵も進みやすいことから「酒米の王様」とも称される。県立農林水産技術総合センター(加西市)によると、今年の山田錦の田植えは、6月上旬に本格化する見込みという。

 生産計画は、JA全農兵庫が毎年11~12月、全国の酒蔵や酒造組合に翌年産の需要を調べ、翌1月にまとめる。県産山田錦として出荷されるみのり(加東市)、兵庫みらい(加西市)、兵庫六甲(神戸市北区)の3JAの集荷分を対象としている。

 21年は、新型コロナの感染拡大で酒蔵からの注文が激減。同年産の計画量は過去最低の1万200トンまで減った。各農家は、加工用米や黒枝豆などへの生産転換で減産分を補うなど試行錯誤。22年産の受注量は下げ止まり、計画量も1万380トンと微増していた。

 23年産を巡っては、昨年末の需要調査で、多くの酒蔵が居酒屋など飲食店での日本酒の消費回復を見込み、受注量を上積みしたという。今月8日には、新型コロナが感染症法上の5類に移行し、さらなる消費拡大が期待されている。

 灘五郷酒造組合(同市東灘区)の担当者は「計画は5類移行の話が出る前の集計。中小の酒蔵が抱える在庫もなくなりつつあり、さらなる需要につなげたい」と勢いづく。

 県が優れた生産者を認定する「北播磨『山田錦』の語り部」の一人、矢野義昭さん(71)=三木市=は「消費の回復はうれしい」と喜ぶ。一方で「生産計画は回復したが、高齢化など農家を取り巻く環境は厳しい。関係者で協力して日本酒の食文化を守っていきたい」と話した。

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