万が一に備えて家庭に防災リュックを…用意すべきものは?あると便利なものは? 防災士に聞く

防災リュックの作り方を教えてくれた野田さん=敦賀市津内町2丁目
くしゃくしゃと丸めた新聞紙を袋に詰めて手足を入れれば防寒対策になる

 石川県珠洲市で震度6強の地震が発生し、日頃から災害に備えておくことの大切さがクローズアップされる中、各家庭で用意しておきたいのが「防災リュック」。市販のものもあるが、必要な物や量は人それぞれ。手持ちのリュックに日用品などを詰めれば手軽で安価に用意でき、家族と相談しながら作ることで防災意識を高めるきっかけにもなる。福井県の敦賀市防災士会の事務局長、野田栄一郎さん(74)に作り方を教わった。

 ■新聞紙は万能

 まず、バッグはトートバッグなどではなく「避難する時に両手が自由に使えるようリュックに詰めて」と野田さん。準備する物や量の目安は3日分を目安に、できれば10日分の食料や物品があると安心という。

 さまざまなものを入れれば役に立つが「重すぎると避難する時に動きづらくなる」(野田さん)。大人の男性なら4、5キロまでを目安に、情報収集のためのラジオやスマートフォンの充電器、ウエットティッシュやばんそうこうなどの日用品を詰めておく。

 女性はポンチョを入れておくと、着替えやトイレ時にも役立つという。また、新聞紙も2~3日分入れておくと、折りたたんで食器やスリッパとして使える。新聞紙は熱が伝わりにくく断熱性があるため、体に巻き付けたり、丸めた物を袋に詰めて手足を入れたりすることで保温でき、寒さをしのぐのに活用できる。

 水は「一番必要だけど一番持ち運びがネック」と野田さん。1人1日3リットルが用意の目安とされているが、現実的には運ぶのが難しい人も多い。「持ち運べるだけ入れておいて、車や物置など屋外に備蓄しておくのも一手」としている。

 ■定期的に入れ替え

 長期保存が可能な非常食は近年種類が増え、味もおいしくなっている。お湯や水を注いで食べることができる乾燥米飯「アルファ化米」を使ったごはんやおにぎり、柔らかい食感のまま缶詰になったパンなど好みに合わせて選べる。

 非常食は賞味期限があるため、定期的に新しいものと入れ替える「ローリングストックを忘れずに」(野田さん)。製造から5年程度保存できるものもあり、便利な一方で「賞味期限を忘れがち。たまに確認して新しいものと入れ替え、調理の練習がてら食べてみるといい」とアドバイスする。

 防災に備える上で「大切なのは簡単なこと、できることから取り組むこと」と野田さん。災害はいつ起きるか分からないため、常に意識を持つ必要があり「リュックの準備をきっかけに、家族の会話の中で防災を話題に上げてほしい」と話していた。

☆…防災リュックの中身(一例)…☆

 【衛生用品】 ウエットティッシュ、ティッシュ、マスク、使い捨て手袋、消毒液、ガーゼ、ばんそうこう、歯ブラシ

 【食事用品】 サランラップ(皿に巻く用)、箸、スプーン、水、食料品

 【その他】 スマートフォン充電器、懐中電灯、ラジオ、軍手、ポンチョ、新聞紙、子どものおもちゃや絵本

 ※家族で話し合い、必要なものは追加する新聞スリッパを作ってみよう

 野田さんが子ども向けの講習会などで教えている、新聞紙を使ったスリッパの作り方を教えてもらった。「避難所で汚れや冷たさが気になるときに使えるので、親子で試して覚えておいてもらえたら」(野田さん)

 【作り方】

 ① 新聞紙見開き1枚を四つにたたみ、しっかりと折り目をつける。二つに折った状態(単面)にする。

 ② 下半分を真ん中でたたみ、二つ折りにする。

 ③ ②の両端を内側に三角に折り、全体を内側にたたむ。

 ④ 裏返して3等分に折り目をつけ、左側の三角部分に、右側の角を入れ込む。裏返して形を整えれば完成。

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