G7広島サミット目前 脱炭素化もテーマです マツダ 大変革期にどう動く… キーマンに単独インタビュー

広島サミットを前に先月、札幌市で開かれた「G7気候・エネルギー・環境大臣会合」。

議論されたテーマの1つが、自動車分野の脱炭素化でした。

世界的に電気自動車シフトが加速する中、地元自動車メーカー、マツダは、この合意をどのように受け止めるのか? 100年に一度と言われる変革期、グローバル企業マツダはどう動く? 広島サミットを前にキーマンを直撃しました。

サステナブルな未来を語る

話を聞いたのは、マツダで持続可能性(サステナビリティ)を統括する 毛籠勝弘(もろ・まさひろ)専務です。

毛籠氏は、マツダの北米事業を統括するアメリカ法人の社長や、ヨーロッパ法人の副社長も経験した国際派です。

小林康秀 キャスター
「毛籠さんとってミュージアムはどんな場所なんでしょうか?」

マツダ 毛籠勝弘 専務
「ここはマツダの歴史が詰まっていますから。リニューアルして、ブランドがより反映されて、お客さんが見てくれて、幸せを感じて。うちのスタッフがそれを量産してくれる場所です」

マツダは3年前、創立100周年を迎えました。その時どきの社会課題と向き合いながらの100年でした。

マツダ 毛籠勝弘 専務
「自動車の業界で言いますと、昔からやっぱり社会課題っていうのは大きな課題なんですよ。排ガス規制が70年代にあったり、それから公害もありました。工場排水をきれいにするとか。いろんな形で社会と関わりながら、ここまでずっとマツダは100年間続いてきた」

そして今、温室効果ガスの排出をゼロにするカーボンニュートラルという新たな課題が突きつけられています。

中期経営計画会見 去年11月。

マツダ 丸本明 社長
「今後、積極的な対応が必要となるカーボンニュートラルや、それを達成する有力な手段である電動化などへの対応を着実に進めてまいります」

マツダは、7年後の2030年、生産車のすべてに電動化技術を搭載し、このうちEV(電気自動車)の販売比率を最大40%にする目標を立てています。

また、国内外の工場で温室効果ガスの排出量を2035年に実質ゼロにしたうえで、2050年にはサプライチェーン(供給網)全体を通じた実質ゼロを目指しています。

マツダ 毛籠勝弘 専務
「事業に関していえば、やはりCO2をできるだけ排出しない。環境に優しい技術開発・製造、物を運ぶことも含めて全てで持続可能な世の中にどれだけ貢献しているか。そういった面から経営を見ていくというのは、非常に大事だと思っています」

アメリカは? ヨーロッパは? 各国の事情について

アメリカでは、2030年までに新車販売の5割を、電気自動車やプラグインハイブリッド車などにするとしています。

マツダ 毛籠勝弘 専務
「日本と違ってヨーロッパとアメリカでは本当に重要な社会インフラなんです。車がないと生活ができないっていう社会ですから。やはりしっかりとした性能が出せて、それは環境性能も走行性能もそうですし」

「ヨーロッパであれば、街乗りの人が非常に多いんです。小型でコンパクトで、駐車も可能で、そういった車が好まれます。アメリカでは、アウトドアに行ったりとか、長い距離を走ったりとか、そういうものに適した車を選択されるというふうに思います」

アメリカとヨーロッパの自動車市場に精通している毛籠氏は、アメリカの販売店舗の電動化を見すえた取り組みを肌で感じています。

マツダ 毛籠勝弘 専務
「新しいお店では、充電のステーションなどが簡単に追加できるように事前から設計してあるんです。従って電動化がだんだん増えていけば、そういう州では、販売店にもすぐに充電インフラに参加をしていくということで。全体的な電動化の進展をサポートできる。お客さまに安心して商品をおすすめできるような環境にしていく。重要な1つのインターフェースだというふうに思っています」

ヨーロッパでは自慢のロータリーエンジンを発電機に活用したプラグインハイブリッド車を発表し、時代の変化への対応を急いでいます。

マツダ 毛籠勝弘 専務
「プラグインハイブリッドのような、ふだんは街乗り通勤などではCO2はあまり排出しないソリューション。それから週末、あるいはバケーションなどで遠くへ車で行かれるケースが多いんですけども、そういったときは電欠の心配をしなくて良いプラグインハイブリッド。こういったものが、現実的なソリューションとして受け入れられるニーズに合うのかなというふうに思ったりします」

こうした中、3月、EUが突然、打ち出した方針転換…。ハイブリッド車を含むエンジン車について新車販売の禁止を目指していたEUが、二酸化炭素と水素を合成して作る「合成燃料」の使用を条件にエンジン車の販売継続を容認する姿勢に転じたのです。賛否が分かれる修正を、毛籠氏は冷静に受け止めています。

マツダ 毛籠勝弘 専務
「やはり内燃機関の可能性を認めている国が出てきているということは、われわれ想定はしていますけれども。あのようにオフィシャルに出るのは、ポジティブにとらえたいなと思います。その理由はやはり技術開発を進めていくと、内燃機関でカーボンニュートラル燃料で社会インフラを支えていくっていうことが、実際、可能だというふうに思うからです」

カーボンニュートラルへ道筋… エンジン車でも!?

エンジン車でもカーボンニュートラルへの道筋は描けるというわけです。

マツダ 毛籠勝弘 専務
「カーボンニュートラルに向けては、いろんな道筋があると思うんです。われわれも自社の工場もありますし。その時代に合った技術を開発をして。持続可能な社会に貢献するために使うということが、われわれの務めです」

小林康秀 キャスター
「G7サミットへ近づいています。その中でマツダとしてどんなところをアピールしたいというふうに思いますか」

マツダ 毛籠勝弘 専務
「日本ならではのカーボンニュートラルへの取り組みっていうものを発信していきたいと思っています。やはり脱炭素ということを考えますと、CO2は大気中に放出されると、100年以上留まるんですよね。したがって、今すぐ下げるということがものすごく大事なんです。今すぐできる技術で、できるとこからどんどん下げていこうよと。それを社会実装していこうよというような話を、関係各国にしてもご理解いただきたいなというふうに思っています」

小林康秀 キャスター
「インタビューした毛籠専務は、来月、マツダの新たな社長に就任予定です。今週、広島市内では国内自動車メーカーのカーボンニュートラルに向けた取り組みを紹介する展示会も開かれるということです。サミットをきっかけに脱炭素化への動きはさらに活発になりそうです」

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