兵庫県は、古民家などの空き家の流通を活発化させ、移住や定住を促す「空家(あきや)活用特区」に、赤穂市坂越(さこし)地区と西脇市嶋地区を初めて指定した。改修に手厚く補助し、市街化調整区域で困難だった住宅の建て替えなどを認める。県は特区を広げ、地域活性化につなげたい考えだ。(金 旻革)
県によると、県内にある空き家は約36万戸とされ、約15万戸が市場に流通していない。そのうち破損や老朽化がなく、建物の管理状態が良い物件が約11万戸に上るという。
空き家への移住や定住のニーズはあるが、市街化調整区域では住宅の新築や飲食店などへの用途変更が原則禁止。都市部の密集市街地では道路幅が狭くて車の出入りが難しいといった制約が大きい。県は昨年4月、空き家活用につながる規制緩和を盛り込んだ条例を全国で初めて施行し、特区制度を導入した。
特区は市町側が申請し、県が指定する。指定によって、空き家の売買や賃貸で市町と連携する宅建業団体などの相談やサポートが得られる。市街化調整区域での用途変更は特区内の許可基準を満たせば認可する。密集市街地の狭い道路に花壇などの設置を制限し、車が通行しやすい環境を設ける。建物の改修などを支援する補助金も、特区では他地域よりも10%上乗せされる。
初の指定を受けた2地区は、いずれも市街化調整区域にある。坂越地区は江戸から明治時代にかけて日本海や瀬戸内海の交易を担った「北前船」の寄港地として栄え、歴史的なまち並みが残る。空き家は75戸あり、地区としてはカフェや物販店などへの用途変更で地域活性化を目指す。嶋地区は田園地域の集落に22戸の空き家があり、住宅の新築や宿泊施設などを整備する将来像を描く。
斎藤元彦知事は、定例会見で「規制緩和でにぎわいづくりを進め、観光振興や人口減少対策につながるよう期待している」と話した。