3度目のインディ500制覇へ挑む佐藤琢磨。最初のターゲットとなる予選は「理想はポール。最悪でも予選2列目以内」

“Month of May”、5月に入りインディアナポリスは第107回インディアナポリス500マイルレースに向けてレースモードが高まっている。

 5月12、13日にロードコースでのGMRインディGPが終わり、チップ・ガナッシ・レーシングのアレックス・パロウが今季初優勝を決めた。

 2日間のインターバルの後、グランプリコースはレイアウトを戻され、5月16日からいよいよインディ500のプラクティスが始まる。

 今年で14回目のインディ500を迎えるチップ・ガナッシ・レーシングの佐藤琢磨も、インディGPでは今季クルマをシェアするチームメイトのルーキー、マーカス・アームストロングのピットボックスで終始レースを見守っていた。

 その琢磨がインディ500ではレーシングスーツに着替えて、ドライブする側となる。

 4月のインディオープンテストでは総合で5番手のタイムをマークし、今季初レースだったテキサスでも予選6番手の好位置でスタートしている。

 移籍したチップ・ガナッシ・レーシングとのタッグもまずは順調に進んでいるようだ。今季2レース目がいきなりインディ500の大舞台となるが、ベテラン琢磨は14度目のインディ500をどのように戦っていくのだろうか?
 

インディ500走行に向けてインタビューを受ける佐藤琢磨

 
ーーいよいよインディ500が始まります。昨年のインディ500チャンピオンチーム、チップ・ガナッシからのレースになりますが、今年はいつものインディ500と違うんでしょうか?

「今年はインディ500とオーバルのレースを走るというプログラムを考えた時、やっぱり最強のチームで、最強のパッケージで走りたいという気持ちがありました。昨年デイル・コインのチームで勝ってトップチームを負かしたいという気持ちもあったけど、結局それは叶わなかった」

「その後、いろいろな条件で考えた時に、どこのチームで何ができるか試行錯誤していて、そこへチップ・ガナッシの話がきて、興奮したと同時に複雑な気持ちにもなりました。フル参戦ができなくなることについては、自分の中で消化するのも時間がかかりましたしね」

「でも、この近年インディ500で素晴らしいパフォーマンスを見せているチップ・ガナッシのクルマに乗れるというのはこれ以上ないチャンスと環境でした。勝つためにはここで走るしかないと」

ーーチップ・ガナッシでは、ここまで順調に来てますか?

「このチームに来てみて、僕がアンドレッティ・オートスポートやレイホール、デイル・コインでやって来たことの答え合わせができたし、それぞれのチームでできなかったことも、チップ・ガナッシの中でわかったこともあります」

「さらに今まで自分たちが知らなかった領域もチップ・ガナッシの中で用意されていた。さすがだなって思う部分もあります。反対に僕たちがやっていたことを、これからチップ・ガナッシの中でやってみようという領域もありますね」

「そういうことをいろいろと積み重ねてミスなくインディ500の決勝レースまでに仕上げていくことになるんだと思います」

ーーまもなくプラクティスが始まって、いよいよ走り出しますが、予選に向けてプラクティスのプログラムはかなりできあがっているんでしょうか?

「まずベースラインが良くて走り出しの段階でかなりクルマが仕上がっていますが、今年はエアロキットが変わってインナーのバージボードが付いたり、リヤのディフューザーが延長されたり、リヤのウイング傾角とか変わったりとエアロがかなり違います。まずそれを確認しなくてはいけない」

「でも、チップ・ガナッシは4台のリソースがあるし、それを自分たちのアドバンテージに変えられるかどうかですね。その先はそれぞれのドライバーに合わせていく作業になると思います」

「僕の好みもあるし、オープンテストの段階から僕のリクエストを取り入れてもらって確認作業もして、良い結果も出ています。これを続けてプラクティスで試して、トラフィックの中とか、いろんな状況で走ってみてクルマを仕上げていくことになると思います」

ーーインディ500のレースを見据えて、まず予選までのターゲットを、どのように考えますか?

「もちろん理想はポールポジションですよ。取りたいし(笑)。でもフロントロウには並びたいですね」

「チップ・ガナッシだけでなく、マクラーレンもテキサスでポールを取って速くなってるし、他のライバルも速い。だからそう簡単なことではないし、今年はもっと僅差になるでしょう」

「最悪でも(笑)、予選2列目、6番手以内にはいないと。そうでなかったら……(笑)、決勝は大変なことになっちゃう。だから、まずは2列目以内でスタートできるよう頑張りますよ!」

 2023年の琢磨にとっては大一番となるインディ500。しかしそこに気負った様子もなく、ベテランドライバーの風格さえ見える。3度目のインディ500制覇に向けてカーナンバー11のマシンがまもなく走り出す。
 

インディ500に向けて気合い十分の佐藤琢磨

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