【SNS特報班】子育てしやすい町は「保育士にも優しい町」 明石市

園児を着替えさせる保育士の池田玲香さん=兵庫県明石市西新町1丁目(熊本日日新聞社提供)

 「子育てしやすい町」として全国の注目を集める兵庫県明石市だが、移住などによる人口増で一時は保育所に入所できない待機児童も増加。ピーク時の2018年4月には571人を数え、全国でもワーストだった。そんな危機的状況を乗り越えたのは、16年度から国に先駆けて取り組んだ保育士の待遇向上のおかげだ。「保育士にも優しい町」になることで、待機児童は大幅に減った。

 明石市が展開したのは「待機児童解消に向けた緊急対策」。メニューの一つは「保育士の子どもは優先的に保育所に入所できる」というものだ。

 夫の転勤で明石市に移り住んだ保育士の田中佑美さん(35)も、この対策に背中を押されて保育士復帰を決めた。田中さんは現在、明石市内の私立明光保育園で2回目の育休を取得中。生後3カ月の第3子が1歳になれば、再び職場復帰する予定だという。

 「保育士宿舎借り上げ支援事業」という制度もある。明石市と保育所が国の助成制度を活用し、保育士の家賃を採用5年目まで月額5万7千円を上限に補助する。保育士5年目の山本沙葵さん(26)も就職時、この制度が決め手になったという。「仕事に慣れていないのに金銭的に厳しいと、そこもストレスに感じそうだと思っていた」

 明石市内の私立保育所などに保育士として採用されると、3カ月経過すれば10万円、1~6年経過で毎年20万円、7年が経過すると30万円の最大計160万円の定着支援金が直接支給される制度もある。同制度の恩恵を一部受けた保育士の池田玲香さん(33)は「昔は保育士が7年勤めるなんてない時代だった。でもここ数年で長く勤める人が増え、保育士の年齢層も幅が広がった」と話した。

 明石市こども育成室によると、22年度の市内の私立保育所と認定こども園、小規模保育事業所は計約110カ所。21年度の常勤と、1日6時間以上、月20日以上働く「常勤的非常勤」保育士の数は計約1100人と、緊急対策がスタートした16年度のそれぞれ2倍以上に増えている。待機児童は減り、22年4月時点で100人とピーク時の6分の1ほどだ。 (熊本日日新聞社提供)

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